さて、もうひとつのキーワードをご紹介しましょう。
脱工業製品
です。ちょうどわたくしが1960年生まれなので、私が育った高度成長期1970年代というのは、大手工業製品にすべてが飲み込まれる時代でした。大手スーパーの進出により、個人商店はことごとくつぶされ、零細個人企業による丁寧な手工業は豆腐、パン、肉・魚、野菜に至るまで消費者から見放され、つぶされていったという時代でした。
今からすると信じられませんが、味も安全性も何から何まで、今の時代に引き直して、極端に言えば「山口商店」よりも「イオン」など大手の商品に信頼があったわけです。そういう時期が長く続きましたが、これも、流れは今や大きく変わりつつあります。
大手スーパーの「工業製品」を、まだ買いますか?
つまり、近所のパン屋さん、お肉屋さん、魚屋さんなどが消えていき、すべて大手スーパーに取って代わられて、そこで売られるもの、というのは全国規模で工業製品として売られるため均一で値段が安かったため、高度成長期に庶民は殺到したわけです。
たまに端っこが焦げたりしている近所の手作りのベーカリーのパンは消費者に「不良品」呼ばわりされて消えていき、家庭で食べるパンはすべて大手企業が工場のラインが作り出すもので、それが良いものだ、と消費者が信じていたのです。
ワタクシの母親などが典型例で、近所のパン屋であんパンを買うと「衛生状態が悪い」、とひどく怒られ、「ヤマザキパンのあんパンを大手スーパーで買いなさい」、と指導されたと言います。近所のお肉屋さんのメンチカツもアイスクリームも、衛生状態が悪くて危ないので食べてはいけない。そしてそれらはテレビで大々的なコマーシャルを打つことができる大手の食品加工企業の商品に取って代わられていったわけです。
それが最終的にコンビニという形まで行きついたのが現在なわけですが、これも世界の最先端では、すでに変化をしています。少なくともアメリカ西海岸でまともな人(ある程度以上の学歴があって字が読める人)で食品を大手のスーパーで買う人は、ほとんどいません。要するに「何が入っているのか不明な工業製品を口の中に入れる不安」が急に浮上してきたわけです。そりゃそうです。あれは食品というより、極端なことをいえば、化学製品や工業製品に近いですからね。
今日本でも、近所のブーランジェリー(パン屋さん)が朝しっかり焼いているフランスパンが、普通のスーパーで売っているフランスパンよりも2割高いとして、果たしてみなさんはどちらをお買いになりますか?
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