安倍総理も知らない、シリア問題の真相(上)

またもやインテリジェンス能力のなさを露呈した日本

つまり米欧のインテリジェンス機関と事実上、渾然一体である越境する投資主体たちが「大量の、しかも比較的長期的なドル買い」をそのタイミングで一斉に入れたことから「シリア早期開戦は、実のところ考えられていない」という判断を下すことが可能だったのである。そのうえで、仮に表向き「対米追従外交からの脱却」を本当に図りたいというのであれば、米欧がシリアを巡るエンド・ゲームの中でその直後に打ち出すことになっていたはずの提案(「化学兵器禁止条約」の活用)を行う役回りを進んで担うべきだったのである。

ところがその後の流れを見る限り、わが国政府は明らかに迷走に迷走を重ねた。8月31日に行われた日米外相電話会談に始まり、安倍総理大臣も電話会談、そして対面での首脳会談をオバマ大統領との間で重ねた背景には、結局、「ブレない判断」を下すことができなかったことを露骨に物語っている。そしてそうなった理由はただ一つ、公開情報から米欧の動かす世界史の“意味”を読み取ることのできる「分析者」がわが国政府部内では決定的に欠けているということなのだ。

日本株上昇が演出されるパターンを見抜け

さて、今回のシリアの「化学兵器」を巡る騒動から、私たち日本人が得ることのできるもう一つの教訓となったのが「外生的リスク」がわが国マーケットに対して与えるインパクトである。つまり「国内では株高になる要因が整ったとしても、国外において巨大なリスクが発生し、炸裂寸前ともなれば、前者は後者に押しつぶされてしまう」ということなのだ。

私はこの東洋経済のコラムも含め「2013年8月には日本株マーケットが“大高騰”となる」と述べてきた。だが、その際、必ずこう条件を付してきた。

「ただし、外生的なリスクが炸裂しない限りにおいては」

いわゆるアベノミクスが始まって以降の日本株マーケットで高騰が演出される際、必ず見られるパターンがある。それは「日本株の買い」と共に「米ドル・米国債の買い」が行われ、結果として「円安」が誘導されるというものである。したがって「ドル高・円安」の動きが見られる時、米欧の越境する投資主体たちは明らかに「日本株高」への誘導を画策していると考えることが(少なくとも現状においては)できるのだ。

そして事実、先ほどから何度も述べているとおり、彼らは8月22日の夕刻に大量の「ドル買い」を入れてきた。したがって「8月の大高騰」を日本株についてもたらす基本的な構造が、そこから整えられ始めたというわけなのである。

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