安倍総理も知らない、シリア問題の真相(上) またもやインテリジェンス能力のなさを露呈した日本

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しかもそれとは相前後して、8月中旬までわが国のマーケットで続いてきた機関投資家、すなわちプロたちが交互に続ける「裁定取引」がピタリと止まり始めた。一日の間で極端な下げが生じたと思ったらば、後場の終わりには元値に戻っているという「裁定取引」特有の展開を前に、個人投資家たちはすっかりシュリンク(萎縮)していたはずだ。

だが、それが止んだということは機関投資家たちとしても次のフェーズへとマーケットを動かすという意思決定をしたことを意味していたのである。そしてそこからは「現物買い、先物売り」が盛んに行われるようになり、8月末には日本株の上昇局面も見られ始めたのである。

大事なことはこのタイミングで動いていたのは国内の機関投資家たちばかりだったということなのである。裁定取引が盛んに行われたフェーズにおいて、平均株価を露骨に下げることになる「現物売り、先物買い」を大規模に行っていたのは米欧の越境する投資主体たちであった。そして8月後半になるとそうした動きを彼らは明らかに止めたものの、マーケットには戻ってこなかったのである。

今になってみると、その理由は明らかだ。シリアの「化学兵器」を巡る騒動が8月31日(米東部時間)に行われたオバマ「開戦」演説でクライマックスを迎えるということがわかっていれば、その前に「日本株買い」を入れることは愚の骨頂だからである。むしろそこに向けて危機が演出されていく中で下がりに下がり切ったところで買いを入れ、この演説によって「結果として米国はすぐに開戦しないではないか」と安堵感が広まり始めたところで売り抜けるとするのが正しいということになる(その裏側で「ドル買い」を入れておき、為替マーケットで儲けるというのが「Side B」だ)。

今回の「シリア『化学兵器』騒動」によって延期された“8月の大高騰”のための構造はそうした外生的なリスクが収束したと“演出”されることにより、むしろ9月になってから日本マーケットで花を開かせ始めた。そう、ゲームは全く終わっていなかったというわけなのである。

(以下、次回に続く。次回は9月27日に掲載予定です)

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