野手はさらに厳しい。
・通算500安打以上 4人
(イチロー3080安打、松井秀喜1253安打、青木宣親774安打、松井稼頭央615安打)
・通算100本塁打以上 2人
(松井秀喜175本塁打、イチロー117本塁打)
・オールスター選出 3人 延べ13回
(イチロー10回、松井秀喜2回、福留孝介1回)
野手は14人のほかに、2012年オフに海外FA権(フリーエージェントを指し、いずれの球団とも契約締結できる権利)を行使して、西武からオークランド・アスレチックスに移籍したものの、一度もMLBに昇格しなかった中島裕之(現・宏之、オリックス)などがいる。
エース級の投手以外は通用しない
ありていに言えば、MLBで通用したNPB出身の野手はイチローと松井秀喜だけだ。この2人は、入団した球団で契約満了時に再度大型契約を結ぶことができたが、他の選手は契約満了とともにFAとなり移籍するか、1年契約やマイナー契約でかろうじて残留している。ほとんどの選手が、NPB時代と比較して成績を大きく落とした。そして松井秀喜と現役のイチロー、青木宣親を除く全員が、のちにNPBに復帰している。
野茂英雄のMLB移籍から23年、イチローの移籍から16年、MLB側は、NPBの評価をほぼ固めたものと思われる。それは「エース級の投手は通用するが、それ以外の投手と野手はほとんど使えない」というものだ。「イチローと松井秀喜は例外だった」とも思っていることだろう。
今オフ、NPBからは大谷翔平のほか、西武の牧田和久がポスティング(MLB球団が日本の所属球団から交渉権を入札で獲得する制度)での海外移籍を目指している。海外FAでMLB挑戦を表明しているのは、ロッテの涌井秀章、オリックスの平野佳寿、日本ハムの大野奨太、ソフトバンクの鶴岡慎也の4人だ。投手の牧田、涌井、平野にはオファーがあるかもしれないが、捕手の大野は中日、鶴岡は日本ハムへの移籍を決めた。
今や日本人野手にとって、MLB移籍は現実的な目標ではなくなっている。こうした状況を受けて、NPB球団側も、野手のMLB移籍には理解を示さなくなっている。たとえば、2012年、当時日本ハムの糸井嘉男は非公式にMLB挑戦を口にしたが、日本ハムはこれを認めず、翌年1月、オリックスに電撃トレードした。2014年オフには阪神の鳥谷敬が海外FA権の行使を表明したが、阪神は球団を挙げてこれを慰留した。
結果的に、今の日本選手のMLBへの移籍は、一握りの超A級投手に限られている。エースとしてリーグに君臨し、毎年圧倒的な好成績を上げる投手だけが、ポスティングでの移籍を容認される。
この超A級投手は、毎年抜群の成績を上げるために、一定の年限になれば「NPBではこれ以上やることがない」状態になる。球団からしても年俸が高騰し、抱えきれなくなる。そうなればMLBに売らざるをえなくなる。ポスティングを利用すれば、球団には20億円以上(以前は50億円以上)の移籍金が入ってくる。20億円と言えば、1球団の年俸総額の過半にもなる高額だ。
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