いつか終わるとしても、それは今ではないかもしれない
この謎を解くカギは、終末の日をめぐる情報が握っている。(1)世界の終わりがいつか確実に訪れることと、(2)その日がいつであるかを皆が正確に知っていることは、似ているようで、実はまったく異なる状況なのである。
具体的にいうと、(2)の場合、市場経済は今すぐに崩壊するが、(1)だけではそうはならない。終末の日がいつなのか正確にわかっていないかぎり、先に述べたようなドミノ倒しのロジックは成り立たないのだ。なぜなら、終わりのタイミングが特定できなければ、そもそも最初のドミノが倒れないからである。
いつ終わりになるかわからないということは、つねに「明日」がやってくる可能性を考えて、将来を意識しなければいけないことを意味する。これが「将来ちゃんと受け取ってくれる人がいるから自分も使うことができる」という形でお金の価値を生み出し、市場経済に秩序をもたらすことになるのである。
世界の終わりはいつかやってくる、でも、その日がいつなのかがわからない。この不確実性こそが、われわれの市場経済を支えているのだ。
さて、世界に終わりがあるように、連載にも終わりはやってくる。昨年から執筆を担当してきたこの「インセンティブの作法」も、おかげさまで予定されていた1年間の連載を無事に勤め上げることができた。今まで拙稿をご覧いただいたすべての読者の方に、この場を借りてお礼申し上げたい。
【初出:2013.9.14「週刊東洋経済(新成長ビジネス100)」】
※「インセンティブの作法」は今回が最終回です。1年間、ご愛読ありがとうございました!
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら