世界滅亡まで一週間! とわかるやいなや……
いま仮に、「1週間後に世界が滅亡する」ことが人類に伝わったとしよう。荒唐無稽ではあるが、宇宙人の襲来や隕石の衝突など、SF映画・小説では決して珍しくないシチュエーションだ。このとき、市場経済はどのタイミングで機能不全に陥るのだろうか。
世界滅亡の当日には、市場が崩壊、お金は使えなくなっていると確認した。
では、その前日はどうだろうか。1日残されてはいるけれど、明日になればお金の価値がゼロになることもわかっている。
これを織り込めば、滅亡前日時点で、お金を受け取ってくれる人はすでに誰もいない。筆者が昔夢中になった某少年マンガ風に表現すると、世界滅亡の前日には「市場はもう死んでいる」のだ。
さらにもう1日さかのぼって、世界滅亡の2日前ではどうだろうか。ここまでの分析によると、明日(滅亡の前日)になればお金は使えなくなってしまう。将来使うことができないお金は誰も受け取ろうとしないので、結局は滅亡2日前のお金の価値もゼロ、市場は機能しないことになる。
これを繰り返すと、市場の終わりがどんどん前倒しされていく。そして、いちばん初めの日、つまり「1週間後に世界が滅亡する」ことが伝えられたまさにその日に、市場経済は崩壊してしまうことがわかる。皮肉なことに、宇宙人や隕石がやってくる前に、地球はとんでもない状況に陥ってしまうのである!
話はこれで終わらない。世界滅亡まで「1週間」というストーリーを考えてみたが、この期間が1カ月であっても1年であっても、同じロジックが成立する。市場はただちにマヒしてしまうのだ。もっと極端なことをいえば、この期間は1万年であっても1億年であっても構わない。どんなに滅亡までのカウントダウンが長い道のりだったとしても、その長さとは関係なく、市場は速やかに死を迎えるはずだ。
しかし、だとすると、なぜ私たちのいるこの世界で、市場経済はきちんと働いているのだろうか?
今は繁栄しているかに見える人類も、いつか滅びることは間違いない。地球や太陽系自体に寿命があるのだから、それを超えて人類が生き残ることはできないだろう。SF作品の中だけではなく、現実にも「世界の終わり」は確実にやってくる。とすれば、それがどんなに遠い将来であったとしても、市場は今すぐにその機能を失うはずなのだが……。
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