安倍首相にとっての「開運の9月」
15年9月を無事に迎えられるか

✎ 1〜 ✎ 150 ✎ 151 ✎ 152 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

安倍首相は日本時間の9月8日、2020年東京オリンピックの開催決定の場面に自ら立ち合った。成立済みの消費税増税法に従って来年4月に8%への税率引き上げを行うかどうかについて、首相は景気の動向などを見て10月初めに判断すると言明していたが、オリンピック開催決定の勢いに乗って、決断時期を繰り上げた。

合わせて実施する法人税実効税率引き下げ問題の決着を見届けて、9月19~20日頃に「予定どおり実施」を決めた。

もちろん国際情勢や政治・経済の動きを見極めた上での判断だったに違いないが、もしかすると、「開運の9月」という記憶が首相の脳裏をかすめたのかもしれない。振り返ると、なぜか安倍首相は9月に政治家として大きな出来事に遭遇する運命にある。

まず誕生日が1954(昭和29)年9月21日だ。初めて「スター政治家」として脚光を浴びたのは官房副長官として小泉首相の第1次北朝鮮訪問に同行して拉致問題で強い姿勢を示したときからで、それは02年の9月17日だった。
 03年9月に自民党幹事長に就任する。さらに05年の誕生日の9月21日に官房長官となった。1年後の06年9月20日、52歳の誕生日の前日に自民党総裁に選出され、5日後の9月26日に首相となった。

9月は「開運」ばかりではない。第1次内閣での辞意表明は07年9月12日で、9月25日辞任という苦い思い出もある。だが、挫折後の復活も12年9月26日の自民党総裁選だった。3ヵ月後に総選挙で大勝して首相に返り咲く。参院選も制し、政権基盤は格段に強化された。その後に9月のオリンピック開催決定、消費税増税の決断と続いた。

今年の9月21日に59歳となった安倍首相は、おそらく2年後の15年9月を展望しているに違いない。任期満了による自民党総裁選が控えるが、消費税10%実施の前月である。そこまでの政権の舵取りをどう思い描いているのか。好調持続とはいえ、一寸先は闇の世界だ。いままでは第1次内閣以来の「失敗の教訓」を活かすことができたが、この先は未踏の世界に足を踏み入れる。

15年の前に、まず首相として14年9月を迎えられるかどうか。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事