オリンピックの東京開催が決まった。スポーツの中身だけでなく、「経済効果3兆円」「施設建設費4600億円」「大会運営費3500億円」など、おカネの話にも関心が集まる。
東京オリンピックは2020年で2度目の開催だが、実は開催決定は今度で3度目だ。1回目は戦前の1936年に40年開催が決まったが、戦時体制を迎えたために38年に返上し、「幻のオリンピック」に終わった。2回目は59年に決まり、64年に開催されて、「黄金の1960年代」と呼ばれた時代を彩る中心的な舞台装置の役割を果たした。
私は、1回目の招致の発案から開催決定、返上、2回目の招致、決定、開催準備など28年間の経緯、政治や経済とオリンピックの関わりを調べて1冊の本にしたことがある(PHP研究所85年刊の『東京は燃えたか―黄金の60年代、そして東京オリンピック』。文庫版は講談社文庫88年刊)。
当時、現存していた1回目の関係者も含め、大勢の人へのインタビュー、資料の調査などを丹念に行った。そこで「オリンピックとおカネ」も調べた。
59年の開催決定時は安倍現首相の祖父の岸元首相の政権だったが、前年、オリンピック準備委員会ができたとき、岸首相が関係者に真っ先に聞いたのが「いったいカネはいくらかかるのかね」という質問だった。関係者は「直接経費は 200億円くらい」と答えた。
実際にかかったのは大会運営費が99億5000万円(ただし市川崑監督の記録映画の興行収入20億円からの7億4000万円が剰余金として残った)、他に東海道新幹線の新設費用3700億円なども含め、かかったおカネの総額は約1兆円だった。1964年と比べて、2013年度の国家予算は28倍、2012年の名目GDP(国民総生産)は約20倍、内閣府発表の2010年の消費者物価指数は約4倍だが、2020年の「大会運営費3500億円」は前回の35倍になる。
カネのかけ過ぎか、妥当な数字と見るかは意見が分かれるところだが、捕らぬタヌキの「経済効果3兆円」に浮かれたりせず、今度は「シルバーの2020年代」の舞台装置として世界の手本となるハイクォリティーでシンプルなオリンピックにするほうがいいのでは。
(撮影:尾形文繁)
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