10月1日、安倍首相が「消費税率の8%への引き上げを来年4月に実施」と正式に表明した。
2日付の朝刊に「財務省・党税調をねじ伏せ」(朝日新聞)、「首相、長期政権にらむ」「首相、周到に議論主導」(日本経済新聞社)といった見出しが躍った。
「長期政権」を意識して政権を担った2度目の安倍首相が、再出発に際して、デフレ脱却と経済再生を目標に掲げたのは、長期政権を築いた佐藤、中曽根、小泉の3内閣の軌跡から「好景気が長期政権の条件」と学び取ったからだろう。7月の参院選を乗り切り、狙いどおり2016年まで3年の無選挙期間を手にしたが、「黄金の3年」をものにするには、増税実施が経済好転の障害にならないかどうか、その見極めが最大のポイントだった。
実施決定と抱き合わせで法人税率引き下げを狙った安倍首相は、「インナー」と呼ばれる「税のプロ」の自民党税調と財務省をねじ伏せて「首相主導」で決着させた。一見すると、首相の指導力で族政治と財務省支配の打破をやってのけたように映るが、税調族と財務省のパワーの源である税の聖域には手を付けなかった。
第1次内閣で公務員制度改革と歳入庁構想で猛進して霞が関の反発と離反を招き、政権失速となった「失敗の記憶」が焼きついているのだろう。とはいえ、増税実施と引き換えに、財務省から譲歩を引き出して政策実現で実を取るという霞が関操縦術が目を引いた。
安倍首相はこれまで「目標は祖父の岸元首相」と繰り返し明言してきた。だが、自民党安定政権を基盤に、景気上昇、長期政権実現、その後に改憲などの持論のプラン達成というシナリオを描く安倍首相は、「手本」を探すなら、むしろ岸氏の実弟の佐藤元首相ではないか。
熟柿が落ちるのをじっくり待つタイプだった佐藤氏は、1960年代後半に56ヵ月に及ぶ「いざなぎ景気」を実現し、7年8ヵ月の政権を築いて、沖縄返還を実現した。安倍政権の将来を左右するのは首相の「岸離れ」の成否かもしれない。
(撮影:尾形文繁)
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