「安倍外交」で得点稼げるか よぎる6年前の悪夢

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安倍首相が10日、外遊を終えて帰国する。

7日からAPEC首脳会議、TPP首脳会合、ASEAN首脳会議、東アジア首脳会議などをこなした。首相が昭恵夫人と手をつないで飛行機のタラップを昇降する映像を頻繁に目にするが、第2次内閣は驚くほど外遊が多い。在任9ヵ月余で、実に11回である。8月24日以降、50日足らずで計4回も出かけている。
 8月29日までバーレーンなど4ヵ国、9月4~9日にロシアとアルゼンチン、23~27日にはカナダとアメリカ、10月6日からはインドネシアのバリ島とブルネイだ。12ヵ月で終わった第1次内閣は、中国、韓国の計2回も含めて、外遊は全部で7回だった。

「安倍外遊」で思い出すのは、第1次内閣時代の2007年9月のオーストラリア訪問だ。健康を害したが、帰国当日にそのまま臨時国会に臨む。衆参で所信表明演説をこなしたが、参議院で演説原稿を読み飛ばした。結局、2日後に辞意表明を余儀なくされた。

6年後のいま、外遊続きで大丈夫なのかと心配する国民は少なくない。もしかすると、安倍首相は、逆にハードな外遊日程で国民向けに健康をアピールしたいのかもしれない。
 今回は「デフレ脱却」を掲げ、「経済宰相」を目指しているが、得意分野でいえば、元来は外交・安保・憲法系のリーダーである。「戦略外交」が持論で、「積極的平和主義」を唱える。国際協調主義と国家安全保障戦略が2本柱だ。
 だが、頻繁な外遊の割には、いまのところ、オリンピック招致以外は、具体的成果が見えず、空回りの印象もある。

ここまでは「布石づくり」の段階、と首相は言いたいのだろう。だとすれば、デフレ脱却、消費税問題とともに、安倍外交もこれからが正念場だ。TPPのように、外交と背中合わせの国内問題の処理という重い課題も待ち構える。布石が効き目を発揮して成果を生み、「アベノミクス」と並んで、「安倍外交」でも得点を稼ぐのか。
 頻繁外遊で健康をアピールしただけという結果に終われば、6年前の悪夢の再現となる可能性もある。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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