教養とはマネジメント能力であり、勇気だ

山折哲雄×鷲田清一(その4)

団塊の世代が日本を滅ぼす

山折:30代以下は、定常社会を生きる新しい世代ということになりますか?

鷲田:われわれが若いときには、大人になったら自動車が欲しいとか、できれば大きいスポーツカーが欲しいといった、ぎらぎらした上昇欲や出世エゴがありましたが、今の若い人子にはそういう欲望が全然ないでしょう。免許も取らないし、新聞もとらない。右肩上がりの欲望がない。それは人類史全体からみたら、はるかにまともなことだと思います。

山折:おっしゃるとおりですな。われわれの世代も同じですよ。

鷲田:そうですか。

山折:車に乗りたいとか、スコッチ飲みたいとは思わなかった。「幸福になんかなるもんか」と思っていましたよ。

鷲田:戦後世代の病ですか。

山折:まあ一種の戦後コンプレックスみたいなものかもしれないですが。私には、「近代を生きるというのは不幸に耐えることだ」という先入観念がありました。19世紀文学というのは、不幸な世界を描くのが主題だった。それが近代だ、という感覚で生活していたような気がします。

鷲田:団塊の世代は、近代ではなく、高度消費社会を生きてきた世代です。右肩上がりというのが、体感なんですよ。まず背は親父より大きいですし。

山折:子どもたちはみんな、親父より背は高い?

鷲田:もちろんです。

山折:われわれは、親父と身長はだいたい同じです。

鷲田:われわれは戦後世代で、ミルクで育ちましたから。それと何よりも学歴が違いますよ。

山折:それはそうですな。

鷲田:今の子でしたら、親父も半分くらいは大学を出ていますが、われわれの親の時代は、旧制高校にも100人に1人くらいしか行けない時代でしたから。だから、何においても、成長するというのは、親父を超えることだったのです。それが体にしみ付いています。

山折:親父の地位が低下するのは、それと関係があるのかな。

鷲田:僕らの世代以降は、もう雑魚寝も知りません。

山折:鷲田さんは団塊の世代ですか?

鷲田:はい、そうです。

山折:私は前々からずっと、「団塊の世代が日本を滅ぼすかもしれない」と言ってきました。だいたいそれは当たっていますね。

鷲田:当たっています(笑)。団塊よりもうちょっと前ぐらい、今の70歳から60歳の間あたりから、なんか人品が変わってきているでしょう。

山折:昔は老人にはもっと威厳がありましたが、今はなくなってしまった。それは、歩き方を見ていたらわかりますよ。年を取ったから、足腰が弱ってヨロヨロしてくる。やっぱり人間は、いいときに舞台の正面から去るべきかもしれません。

(司会・構成:佐々木紀彦、撮影:ヒラオカスタジオ)

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