【産業天気図・スーパー/コンビニ】08年度後半は衣料品苦戦でスーパー曇り、コンビニはたばこ“特需”で晴れ模様
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
2008年後半のスーパー業界は「曇り」、コンビニ業界は「晴れ」の見通し。が、09年前半はコンビニは「曇り」に後退、スーパーには雨雲が現れそう。衣料品等の苦戦に加えて価格競争や「安全・安心」への対策、さらに景況感悪化に伴う買い控え懸念など、スーパーを囲む環境は一層厳しくなっている。一方のコンビニは「タスポ特需」や消費者の中食・内食志向が販売面を押し上げている。
総合スーパー最大手イオン<8267>では、割安のPB商品「トップバリュ」の浸透や共同仕入れを軸にした価格優位性も手伝い、食品は順調に推移している。ただ、非食品部門の苦戦は今後も続く見込みだ。特に利益率の高い衣料品は10%超減少する月もあり、想定以上の厳しさだ。同社は8月の純粋持株会社移行に伴い、重複する管理部門の人員を店舗に充当、経費圧縮と営業力強化を図っている。また、総合スーパーのリストラ対象店舗を当初の100店から125店へ拡大した。下期からリストラを本格化させ、3年間で40店強を閉鎖する方針だ。売り上げの伸長が見込めない中、どこまで収益性を改善できるかが焦点となる。
セブン&アイホールディングス<3382>傘下のイトーヨーカ堂も衣料品の低迷から抜け出せず、既存店の前年割れが続く。同社は消費者の支持が低価格品に集中していることから、8月に食品中心のディスカウント業態「ザ・プライス」を開始した。実験を経て新規出店で育成する方針だ。
堅調だった食品スーパーにも、東北・北海道を中心に買い控えの動きが広がり始めた。既存店売り上げが前年を下回るスーパーもみられる。今後も原材料高に伴う食品価格の上昇は続く見通しで、買い控えムードは他の地域にも波及するだろう。大手を中心に出店計画も多く、さらなる競合激化は必至だ。今後は今にも増して、品ぞろえやサービスの充実、価格面での差別化が求められる。
一方、コンビニ業界は「タスポ特需」と消費者の「中食・内食志向」が売り上げを押し上げている。成人識別ICカード「タスポ」の自販機導入が影響し、たばこの店頭販売が好調だ。また、物価高等の影響から外食を控え、弁当などを買って持ち帰る中食や、家庭で食材を料理する内食志向が高まっている。結果、おにぎりや総菜などが順調だ。7月の既存店売り上げは11.7%増(日本フランチャイズチェーン協会調べ)を記録。8月も前年をクリアしたもようだ。今期は9年ぶりに前年比プラスに転じる可能性が高い。
業界3位のファミリーマート<8028>は08年3~5月期で早くも今09年2月期業績予想を上方修正した。最大手のセブンや減益予算を組むローソン<2651>、サークルKサンクス<3337>も今期計画を超過する見通しだ。ただし、一部チェーンからは「たばこ販売は増えたが、根幹のコンビニ商品は伸びておらず、油断できない」、「タスポの普及が進み、下期後半にかけて効果が薄れるのでは」といった声も聞かれる。景況感の悪化で個人消費のさらなる冷え込みが見込まれる中、特需を取り込むだけでなく、今後も利用を見込める新規客をつかめるかどうかが引き続き課題だ。
来期以降の焦点となるのは来年春頃施行予定の薬事法改正で誕生する新資格「登録販売者制度」だ。従来、処方箋のいらない大衆薬を販売するのにも薬剤師が必要だったが、新資格では一部副作用リスクの高い医薬品を除き、登録販売者を介して販売可能になる。コンビニ等では「医薬品のニーズは高い」(コンビニ大手)として、新規参入機運も高まっているが、新資格の受験には薬剤師のもとで実務経験が最低1年以上必要なため、コンビニにとっては参入のハードルが高い。
こうした中、調剤薬局やドラッグストアとの業種を超えた提携が加速しそうだ。すでに、セブンは調剤薬局最大手のアインファーマシーズ<9627>と資本業務提携し、共同出店や人材面でも協力する構え。一方、ファミリーマートは直営店で登録販売者の人材育成に乗り出し、独自展開を図る。ローソンも調剤併設コンビニを展開するなど、各社規制緩和をにらんで模索している。
【鈴木 良英記者、田邉 佳介記者】
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