「サラサ」ヒットの要因は大きく3つある。1つ目は書きやすさの追求だ。濃くはっきりとした文字をさらさらと最後まで書ける商品づくりにこだわった。2つ目は、多品種展開を行ったことだ。100円という低価格とジェルインクの発色のよさを生かし、女子高生をターゲットにラインナップを充実させた。業界最多の46色までインク色を増やし、筆記具ではあるものの持っていてカワイイ、持ちたくなる商品が評判を得た。
そして3つ目は、社内意識の改革だ。真一氏はこのサラサを収益の柱とする戦略目標を全社員に向けて宣言し、「月間1000万本を販売するグローバル商品に育て上げる」と、つねに目標を掲げ続けた。社長自身が販売、生産、開発の現場に足しげく通い意見を吸い上げるほか、結果をつねにチェック。全社一丸となって成果に取り組む体制を整えた結果、現在の販売量は年間約9000万本、累計で約5億本を売り上げるまでに至った。
海外への販売も積極的に行っている。販売本数は毎年10%程度増加しており、現在、ハイマッキーと合わせてゼブラ売り上げの3分の1を占めるなど、当社を支える中核商品に成長。リーマンショック以降、200億円を割り込んでいた売上高を直近4期連続で増加させ、2017年3月期の売上高は約216億円まで回復、「2000年代には約100億円あった借入金はほぼなくなり、健全な財務体質を維持している」(石川社長)という。
斜陽産業としての自覚
創業から120年が経過したゼブラだが、先行きを決して楽観視していない。現在、IT化が進み、国内の産業構造は大きな転換期を迎えた。特にスマートフォンやPCで代用できる産業の衰退は顕著で、一時期“スマホ倒産”という言葉も話題になった。
この影響は書籍ほど話題にならないが、文具も例外ではない。企業内ではペーパーレス化が進み、需要の大部分を占める教育現場では少子化の影響で生徒数自体が減少傾向にあり、国内での需要増は考えにくい。
時代が変化する中で、石川社長は筆記具の新たな可能性を模索している。具体的には「企業秘密」だそうだが、斜陽産業のなかで筆記具と脳の関係に着目し、研究を重ねている。
経営危機はどの企業でも起こりうるものだ。“ピンチをチャンスに”とは使い古された言葉だが、これを実践するのは並大抵のことではない。ただ、100年を超える長寿企業には、必ず100年続いた要因がある。ゼブラに関して言えば、その要因は「社長の絶対的カリスマ性」と「老若男女が知る数十年来のブランド」だろう。
国内初の鋼ペン先の開発に成功した初代社長、多額の借金を背負うリスクがありながら総合筆記具メーカーへの転換を推進した2代目。そして商品開発本部を設立し、グローバル企業への転換を進めた3代目の現社長。
批判されがちな独断での方針転換、これはゼブラがオーナー企業であるからこそできる技ではあるが、その“突破力”がペン先を製造していた一業者を100年企業へ押し上げた。
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