セーラー万年筆・中島氏がクーデターに反論 旧大蔵エリートが解職され、会社を訴えた

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「自分の人脈を生かし、資金調達もして、金融機関との関係は著しく改善した」と、説明する中島氏(撮影:今井康一)
 12月14日夜。東証2部上場のセーラー万年筆のウェブから、社長だった中島義雄氏(73)の顔写真が削除された。会社側は2日前の12日付けで、中島氏の解職と、比佐泰氏(63)の社長昇格を発表したばかり。これに中島氏が翌13日、「解職の決議は無効で法的措置を講じる」と、報道機関を通じて反論したのである。
 一方、会社側も一歩も引かない。14日には解職の経緯を発表。1年ほど前から、比佐氏ら現取締役が、社長である中島氏が業績不振にもかかわらず、講演など私的活動に注力していたことなどを問題視。会社の業務に専念するといった3点について、中島氏に要請したのだった。
 だが結局、1年たっても、中島氏に改善が見られないとのことで、今年12月11日、比佐氏らが中島氏に対して社長職からの退任を要請。これに中島氏は拒否した。翌12日の定時取締役会に中島氏は欠席し、最終的には会社側が解職を決議、社長交代発表となったのだ。
 中島氏と言えば、旧大蔵省(現財務省)出身で、主計局次長まで上り詰め、「将来の事務次官候補」とまで呼ばれた、エリート中のエリート。が、金融機関からの過剰接待が問題となり、1995年に退官していた。
 一連のクーデターを経て、中島氏は14日には、決議無効と社長としての地位確認を求める仮処分を、東京地裁に申請。以下は、セーラー万年筆の現経営陣に対する、中島氏からの反論である。

講演は知名度を高めるのに必要だった

――比佐氏らをはじめ、経営陣が12月14日に発表した、「異動の経緯に関する説明」の内容をどう考えるか。

彼らの主張は3つある。①講演会など私的な活動に時間を割いたこと、②仕入れ商品を持ち込んで事業化しようとしたこと、③得意先回りをしなかったことだ。

①の講演活動についてだが、私はIRや広報活動の一環として、積極的にやってきた。といっても、多いときで年間10回程度。セーラー万年筆は業績が不振で、十分な広告費を投入できない。この状況下、ブランドや知名度を上げるには、講演活動も必要だ。

私は、若手経営者の勉強会やロータリークラブ、学校からも呼ばれた。そこで、私の過去の経験や、セーラー万年筆の物作りの強さを話した。許可をもらい、万年筆の販売もしている。対外的な活動は、セーラー万年筆のブランドを高めたり、強さを訴えるのにいい機会だった。

彼らが一番問題にしているのは、②の仕入れ商品だ。特に、私が積極的に商品化した、「音声ペン」を問題にしている。これは、冊子に目には見えないドットが振ってあり、英語でも中国語でも、日本語でも、読み上げることができる。使いやすく、子どもから外国人まで、さまざまな層の人が使用できる。今では観光地や英語教育向けの引き合いが強い。2015年で収益はトントンに、2016年からは黒字になりそうだ。

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