セーラー万年筆・中島氏がクーデターに反論 旧大蔵エリートが解職され、会社を訴えた

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翌12日には、もともと定例で(正規の)取締役会を行うことが、以前から決まっていた。私は、彼らともっと話し合う必要があると思ったので、「明日の役員会は延期しよう」と提案。実は前の日には連絡を始めていたいが、最終的には12日朝、比佐氏に紙を渡し、「今日は延ばすと伝えてくれ」と言った。比佐氏は「そうですか、わかりました」と返事をした。

定款上、取締役会の招集権限は、(社長の)私にだけある。その私が延期を指示していたのに、彼らは一方的な”取締役会と称するもの”を開き、私の解職を決議した。

「経営を続けたい。セーラー万年筆には、愛着も誇りもある」と中島氏は訴える

――定款に定められた手続きを、すっ飛ばしてしまうのは、内部統制上、問題がないか。

彼らが14日にリリースした「異動の経緯に関する説明」では、「万一、中島氏の主張通りに何らかの手続きに瑕疵があっても(略)、結論は変わらない」とある。

そんなやり方は通じない。手続き上の瑕疵はちゃんとすべきだ。もう1度やって、同じ結果になるかもしれないが、合法的な「取締役会」を経ずに、解職するのはおかしい。

――こういったクーデターにあっても、なお社長を続けたいか?

私は、セーラー万年筆を破綻から救った、という思いがある。そのために一生懸命、IR活動もやってきた。経常利益も9年ぶりに黒字になるところまできた。これをもっと確実なものにして軌道に乗せたい。セーラー万年筆の経営を続けたい、という思いは強くある。愛着も誇りもある。もっとよくする自信もある。

旧大蔵省のときも脇は甘かった

――過去には旧大蔵省でも、今回のセーラー万年筆でも、足をすくわれてきた。自身でその原因をどう分析しているか。

七転び八起きの人生だった。不徳の致すところかもしれない。大蔵省のときも、脇が甘かったと、随分反省した。自分で言うのも変だが、性格は温厚だと思っている。ただ、現状を変えたいという気持ちが、いつも行動になって出る。それでときどき、つまずくのではないか。

今回、どうなるかわからないが、おカネを使い込んだとか、変な話はいっさいない。手続きがあまりにもひどいから、裁判所に仮処分の申し立てを行っている。裁判所の判断は2015年内にも出るだろう。そのうえで、彼らとは改めて、話し合いの場を持ちたい。

――裁判所が今回の解職の取り消しを命じたとして、そのまま経営を続けるのは難しいのでは?

そう考える人は多いだろう。この先、何年も裁判をやるのは、あまり生産的なことではない。正式な取締役会の判断が出れば、従わざるをえない。彼らは前回の判断を追認するのだろうか。そうすると、(社長を解職された)私は、無任所の取締役になる。

私の任期は2017年3月まである。誤ったことをしていなければ、(取締役を)解任される理由はない。取締役である限り、今後も会社に行く。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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