【産業天気図・百貨店】長らく続く衣料品、高額品の不振で2008年度中は曇り

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 08年10月~09年3月   09年4月~9月

百貨店業界は2008年度後半、09年度前半も「曇り」が続きそうだ。

全国百貨店の既存店売上高はこの8月で5カ月連続の前年比マイナスを記録。07年秋から続く衣料品の不振に加え、ラグジュアリーブランドや宝飾など高額品も月を経るごとに落ち込むばかりだ。

衣料品の不振は、特に婦人服ではワンピースに代表されるファッショントレンドのマンネリ化が要因とされてきたが、この初秋はようやくジャケットなどの新たなアイテムが動き始めたという。また、アパレル各社とも猛暑で秋物が売れなかった昨秋の反省を生かし、夏素材の秋色アイテムなど、晩夏から初秋にかけての商品を打ち出しており、これが好評だ。明るい話はいくつかあるものの、客数自体の低迷が続く中では急回復というわけにはいかないだろう。

J.フロントリテイリング<3086>は、松坂屋での大丸流改革が進捗し、松坂屋の利益率には大幅な改善が見られるものの、両社とも売り上げが伸び悩み、苦戦を強いられている。また、横浜松坂屋、今治大丸など地方店の閉鎖を相次いで決定したように、地方店は都心よりも状況は厳しいとみていいだろう。一方、三越伊勢丹ホールディングス<3099>を発足させた三越、伊勢丹は、今期は子会社整理等を進めるなど、まだ統合効果を発現するには至っていない。それどころか、ファッションに強みを持つ伊勢丹でさえ、新宿本店で前年売上高を下回る月が続く。9月初旬に婦人服フロアを中心とした改装が完了したため、これが集客につながることを期待している。

高島屋<8233>は、全社を挙げて売り場体制や顧客政策の強化に取り組んでいる最中だが、それでもやはり売り上げを伸ばすには厳しい状況にある。期初は大規模な広告宣伝など積極策を講じていたが急きょ慎重策に切り替え、営業費用の引き締めを一層強化している。

主要百貨店の中で最も苦戦を強いられているといえるのは、競合大手に与せず独自のラグジュアリー路線を築きつつある松屋<8237>だ。高価格帯の品ぞろえを強化してきたことがここにきて裏目に出た。店内外の催事を増やしたり、フェアを開催するなど、手を打ってはいるものの、売り上げ回復には至っていない。

売り上げの伸びが期待できない中では、営業費用の引き締めや店舗運営の効率化に走るのは当然だが、こうした萎縮した状況が長く続けば、顧客にとって魅力的な品ぞろえや売り場づくりが難しくなる。新しいスタイルの提案やマンツーマンの丁寧な接客など、百貨店にあるべき機能を効率化の名のもとに失ってしまっては低迷は続くばかりだ。
【堀越 千代記者】

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