――その目安はあったんですか。ここまで来たら、直したくなっても絶対に直さない、というような。
それがないんですよ。結局は勘なんですよ。たとえば絵を描く人もそうでしょうけど、どこかで筆をおかないといけない。ひとつ余計な点を描いちゃったために全部が崩れてしまうことってあると思うんです。文章だってそうじゃないですか。直しすぎちゃってダメになることもある。それに近いと思います。これ以上やると、そのよさが壊れてしまうというような、ギリギリのところがあるはずなんですよ。それを見極めないといけない。
神経を敏感にして、今か今かとタイミングを計るしかない。そこがいちばん面白いところだし、注意したところでもあります。これ以上は絶対に延ばさない。どうやったって翌日になれば直したくなるんですよ。でもこれ以上はだめだ、というところでやめました。
若者に伝えたいことは「人の力を頼るな」
――最後に若いビジネスパーソンにメッセージをお願いできますか。
うーん……。人の力を頼るな、ということですかね。以前、大学に呼ばれて講演したことがあったんですけど、そのときに学生が「坂本さん、私たちの背中を押してください」と言うんで、僕は怒りました。これから何かやってやろうという年齢の人たちが、こんなじじいに向かって力を貸せ、というのはどういうことだと。そういう精神じゃダメだと思いますよ。僕はそう思ってやってきたし。自分でも1歳でも年上の人間は全部敵だと思ってやってきましたからね。
――下の世代は?
知りません。無視です(笑)。ただ才能がある人間は当然いるわけなので、「若い芽を摘む会」というのはひとりでやっていましたけどね。実際は摘んでいないんですが、心の中で、あいつ、ちょっと才能あるな。今のうちに潰しておかないと、という気持ちでいました。冗談ですが。
――それくらいの気持ちでいたほうがいい、ということですよね。
反抗精神というのかな。それも時代錯誤なのかもしれないですけど、そういう気持ちがないと、新しいことはできないと思うんですよ。すでに誰かがやったことをまねするだけでは面白くない。やっぱり自分の力で、自分で考えないといけないですから。でも、そのためには勉強しないといけない。過去のことを知らないで、新しいことをやったような気持ちになっているのは本当に最悪ですからね。
(文中一部敬称略)
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