共働き夫婦はマンション購入で失敗しやすい 老後のことを考えないと後から苦しむことに

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そう言って、沢田さんは、保険の設計書を差し出しました。変動金利にして、浮いたおカネで「安心のために」保険に加入すべきだというのです。提案しているのは、「就業不能保険」と「医療保険」です。沢田さん夫婦は、現在、終身保険にそれぞれが加入していますが、医療保険は持っていませんでした。

岩城:なんとまぁ。変動金利型を勧めて、さらに実質的な保険のセールスですか。

沢田さん:もし、私が亡くなった場合は、住宅ローンは、団体信用生命保険(団信=機構団体信用保険特約制度とは、住宅ローンを借りている人が死亡や、高度障害状態になったときに、保険金が融資元の銀行などに支払われ、残りの住宅ローンがなくなる保障制度。保険料は、住宅ローン金利に含まれている)の保険金で完済されますが、病気などで働けなくなったり、収入が減ったりした場合は別だと。住宅ローンを支払い続けなければならない。だから、入院した場合に保険給付金が下りる「医療保険」と、在宅療養でも保険金がでる「就業不能保険」が必要だと言われました。

なぜ固定金利ローンがいいのか?

岩城:一見、その保険の話は筋が通っているように見えますが、間違っていると思います。まず、住宅ローンは全期間固定金利にしましょう。先ほども少しお話ししましたが、この低金利で長期間固定なのですから、将来の金利上昇リスクを避けられますよね。そしてローンを返済しながら、しっかり貯蓄できる家計にすることがむしろ大切です。

それから、提案された保険も必要ありません。沢田さんご夫婦の場合、住宅の手付金、頭金、諸費用を支払っても、貯蓄残高が500万円あります。日本には高額療養費制度がありますし、お2人とも会社員で、傷病手当金もあります。もし就業不能状態が1年半を超えることになっても、障害厚生年金を受給できる可能性もあります。あれ? よく見たら、沢田さんが借り入れる銀行のローンには、団信だけではなく、全疾病保障も込み込みで付帯されているじゃないですか! そのファイナンシャルプランナーは無駄な保険を勧めていますね!!

保険の話はこれで解決したとして、それよりも、ローンが35年間続くことについて考えなくてはなりません。定年退職後も、ローンの支払いが続くことになりますからね。まずは、マンションを買うということは置いておき、「人生設計の基本公式」(後述)で、老後の生活費がどのくらいになるのか試算してみましょう。これを知っていれば、家を買う、買わないは関係なく、一発で老後が「見える化」できますからね。

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