5兆円売る「独身の日」に見る中国攻略の活路

日本企業が中国で成功するための戦略とは

2016年10月、アリババ・グループを起業したジャック・マーCEOは、「ニューリテール」戦略を発表した。簡単にいうと、これは、オンラインとオフラインの融合により、よりよい顧客体験をしてもらうこと、またAIやその他のテクノロジーを使い、今までのO2O(Online to Offlineの略。オンラインで見た情報がリアル店舗での購買に影響を与える施策のこと)より精密にターゲティングし、より感動を与えることを目指す戦略だ。

この戦略は、中国でEC帝国を構築した男が自らECだけではいけないと認めることだと、世間を騒がせていた。「中国が超速で『スマホ先進国』になれた事情」(2017年3月10日配信)にも書いたように、中国では、各所でリープフロッグ(カエル跳び)現象が生じている。発展途上国であるにもかかわらず、一気に世界一のスマホ社会、キャッシュレス社会に躍進した。若者はネットショッピングに依存し、実店舗ではレストランしか繁盛していない。

ニューリテール元年の取り組み

この理由は、今までの実店舗は価格がネット価格より高く、サービスも品ぞろえも悪いからである。消費者は実店舗を求めていないということではない。最新のテクノロジーを利用すれば、商圏の顧客の嗜好がわかり、ニーズにぴったりした商品を陳列でき、消費者にとって魅力的に見える。たとえば、価格もネット価格と一緒の無人スーパーなら、「おもてなし」がそもそも不要だし、実物に触れられ支払いも楽だ。

また、3Dミラーで化粧効果を検証できたりするのも話題性があり、SNS拡散に向いているので好まれる。つまり、今の中国消費者は実店舗が不要なのではなく、今までの実店舗よりもっと楽しい、自分のニーズに合う、試すことができる、わくわくする実消費体験できる店舗を必要としているのだ。

今年のW11は、この「ニューリテール」の元年ともいえ、実店舗との提携と物流レベル向上への注力により、昨年よりもよい成績を収めたと見られている。

中国国内での実消費体験志向は、日本企業の越境ECと、関係が一見薄そうである。しかし、日本企業が中国人向けのビジネスで成功したい、特に越境ECで勝ちたいなら、顧客の実消費体験、つまり訪日中国人の日本での買い物体験をしっかり満足させなければならないことを意味している。

「日本に旅行に行ったとき、温水洗浄便座を初めて使ったの。本当に気持ちよくてもう離れられない。帰りに実家と自分用の最も高いもの2つを買ったわ」「ホテルのシャンプーを使ったら髪がさらさらで中国に帰っても使いたくて、越境ECサイトで一生懸命探してまとめ買いした」「このシリアルは最近人気のお土産で、やっとコンビニで見つけた。とりあえず全部買ったの。夜食で食べてみて美味しかったし、日本人もよく食べていると聞いたので、中国に戻っても定期的に購入できるといいな」

「日本の百貨店のお姉さんはとても優しくて、私にぴったりしたスキンケアとプロセスを教えてくれた。まさにプロだわ。高くてもずっとこのブランドの化粧品を買いたい」……このような訪日中国人の体験から、日本商品の越境ECビジネスの可能性が見えてくる。つまり、2016年時点で中国本土から637万人規模の訪日中国人観光客消費から「5000万~6000万人規模の越境EC」へ展開していくのが、勝ち組になれるビジネスモデルだからだ。

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