ムーギー:城さんもはまったんや。どこではまったんですか、城さんほどの方が。
城:サラリーマンの閉塞感を描いたリアリティと、それを突破する痛快さの両方があるんです。それがひとつめの理由。もうひとつは、1話ごとに起承転結がはっきりしているんですよ。今期はもうひとつ『Woman』というすごく評価が高いドラマがあるんですが、こちらはどん底状態のままで引っ張って引っ張って、という旧来ながらのスタイル。最後に起承転結がワーッとくるみたいな。
ムーギー:なるほどね。でも今の視聴者はそんなに待ってくれないから。
城:そう。ところが「半沢直樹」は1話ごとにちゃんと起承転結があるんですよ。
――「倍返し」はどう思います? 「倍返し」といえば、半沢とセットで語られるキーワードじゃないですか。
城:倍返しという発想を入れているのはポイントかもしれないですね。組織の中にいると、押して忍んで忍んで、最後に引き上げてもらえばいいやという感じでしょ。だから、倍返しというアイデア自体、組織の中では絶対ありえないんですよ。
ムーギー:本当に倍返ししたら、4倍返しでクビになりますもんね。無邪気な視聴者があれを見て興奮して、本当に上司に倍返ししようとしないことを祈りますよ。でも人間の持っている復讐欲を満たしてあげるというか、攻撃的な本能を体現してやることで人気をとっているのかも。
城:今までの日本のヒーローは、倍返しなんかしないでしょう。自分が折れて折れて、最後は相手がわかってくれるという感じだから。自分が受けたダメージ以上に殴り返すという発想がなかった。逆に言えば、それくらい今の40歳は閉塞感が強いのだと思います。
ムーギー:なるほどね。これは日本のいろんな社会現象に共通しているかもしれませんね。
城:人事部だった経験から言うと、バブル世代って今40代後半ですよね。物語の中の半沢と同じ世代なんだけど、バブル世代はその過半数がヒラ社員のまま終わっているんですよ。課長昇格って、だいたい40歳ぐらいで白黒ついちゃうから。20代の頃、ずっと滅私奉公をしてきたにもかかわらず、自分は報われないんだということがはっきりしてくる。そのせいか、あの世代はうつ病などのメンタルトラブルが非常に多い。「半沢直樹」というドラマは彼らに対して届いているという気がします。
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