城:あのドラマはよくできているんだけど、周囲の反応がまちまちで面白い。日本の会社に勤めている人は半沢の活躍に快哉を叫ぶけれど、外資やベンチャーの人はすごく冷めていて、そもそも「そんなにひどい会社、なんで辞めないの?」ってすごく不思議に思うらしいのです。
ほかにも見ていて不思議なことが多いようで、たとえば同僚が、ある日突然、真っ青な顔になって、田舎の会社に出向させられると言うんだけど、どうして今生の別れだ、みたいな感じになるのかがよくわからない。特に前半最大のピンチは、半沢がフィリピンのマニラの工場に出向させられそうになるという話なのですが、結局は半沢が勝って、代わりに半沢の敵の上司がフィリピンに飛ばされわけです。
そこで上司と上司の奥さんが手を取り合って、「向こうで頑張りましょう」みたいにちょっとほんわかムードで終わるんだけど、そういうのがまったく理解できないみたい。流動性の高い世界に生きている人からすると、イヤならなんでさっさと辞めないの?ということになるんですよ。
ムーギー:ちょっともう現代からするとパラダイムが非現実的というか、浮世離れしているというか。
城:ところが日本企業、特に銀行みたいに古いところは、やっぱりあのドラマの世界そのものなのです。流動性が低くて30歳を超えると転職できないので、ああなるしかない。
ムーギー:あれは原作が書かれたのが10年前だからああなるんじゃないんですか。今は「きみ、フィリピン行きなさい」「じゃ、辞めますんで。どうも、まいど。さいなら~」という感じになってないんですか。
城:今でもたぶんなってない。辞めるのは30歳前後の若い人間だけであって、35歳を超えたらたぶん辞められないです、銀行なんて。
――なんで辞められないのでしょうか。
ムーギー:せっかく優秀な方が多いのに、多いがために、一部を除き行き先がないから。誰も雇ってくれない。
城:「地方の銀行で35歳まで融資やっていました、もうすぐ40歳」なんていう人、採らないでしょ。どこの銀行だってその世代は余っているのだから。
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