火付け役となったのが2014年に六本木5丁目に進出した「ウルフギャング・ステーキハウス 六本木」の成功だ。同店もピーター・ルーガーで40年以上ヘッドウエーターを務めたウルフギャング・ズウィーナー氏が独立して、2004年にニューヨークで開業した有名店だ。
日本ではイタリアンレストランのカプリチョーザやハードロックカフェを手掛けるWDIが運営している。「ニューヨークの店舗では客の3~4割が日本人の日もある」(ウルフギャング・ステーキハウス事業部長の石井英男氏)というほど、人気のステーキハウスだ。
大人気となったウルフギャング
WDIはニューヨークスタイルの赤身肉は日本でも受け入れられると考え、米国で最初の店舗が開業した段階から日本での展開を考えていたという。
だが2001年にBSE(牛海綿状脳症)問題が日本でも発生、2004年から米国産の脊柱を含むTボーンステーキは輸入できなくなり、日本での展開は先延ばしになった。
そこでWDIが2009年にハワイのワイキキに進出したところ、ニューヨークと同じように日本人観光客の話題を集めた。「1日の来店は1000人ほど。ほとんどが観光客で、その9割が日本人観光客」(石井氏)という好調ぶりだった。
日本でBSE問題が収束したことを受け、2013年にはようやく牛肉の輸入規制が大幅に緩和された。WDIは六本木で200坪以上の大型店舗を確保できたこともあり、2014年に満を持してウルフギャング六本木店を開業した。
客単価1万6000円という高額にもかかわらず、ウルフギャングはWDIのもくろみどおり、驚異的な成功を収めた。同社は現在、ウルフギャングブランドで国内に4店舗、海外に1店舗(ハワイ)を運営するが、関連の売上高は80億円前後に達している(東洋経済推計)。
ウルフギャングの後に続くのは冒頭のエンパイアだけではない。今年の6月にはニューヨークで3店を展開する「ベンジャミンステーキハウス」が東京ミッドタウン前交差点付近に進出。ベンジャミンも同じようにピーター・ルーガーで修業したシェフが2006年に現地で開業した店舗で、ニューヨークと同じように、六本木でも競い合う構図だ。
エンパイアを運営するTFMの小栁津社長も、「六本木が肉の街になったのは間違いなくウルフギャングの成功が大きい」と評価する。周辺ステーキ店の運営担当者も「ウルフギャングに入りきれなかったお客が、当店に流れ込んでいる」とうれしい悲鳴をあげる。
ただ六本木が肉の街に変わろうとしているのは、ウルフギャングの成功だけが要因ではない。
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