白斑問題を招いた、カネボウのたこつぼ風土 花王の改革も及ばず、クレーム情報が死蔵

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カネボウ社内で美容部員の複数名に白斑が出ても、それが全社的な問題であるとの認識に至らなかった。第三者調査報告書は、「安全管理や品質管理を使命とする部署のものとしては、その結果を重く受け止めてしかるべき対応をするのは当然」と、同社の責任を厳しく追及している。

「エコーシステム」の導入時にも、品質管理部門での研修は行われていたものの、新システム導入に当たって顧客情報の収集や分析を全社にどう生かしていくかという経営陣の議論は、当時の記録を見ても行われた形跡がないという。つまり、専門部署に一から十まで任せっきりであったワケだ。花王の青木秀子品質保証本部長・執行役員も「マニュアルだけではダメで、一つ一つ、どう使うべきかを伝えることが不十分だった」と話す。

部門間異動を積極化するが…

調査結果を受け、カネボウは顧客対応部門を自社から切り離し、花王に統合する。「エコーシステム」への情報入力も人員を増強のうえ、100%即日入力の体制に切り替える。また、今後は同社内ではほとんどなかった部門間の異動を、次の会計年度が始まる来年1月から積極化し、“たこつぼ化”した組織体制を抜本的に解消していくという。

とはいえ、長年しみ付いた“風土”をそう簡単に変えられるものでもない。程度の大小はあっても、縦割りのたこつぼ化に悩む企業は多い。そこで、部門間異動を積極的にやると表明しながら、実際には業務面での支障を気にしたり、社員の激しい反対にあったりして、中途半端な配置転換しかできなかったという企業も少なくない。

花王とのシステム運用の一本化を進めたり、社内の流動性を高めたりという枠組みを整備したとしても、「社員の意識が変わらなければ、意味がない」(中込氏)。全社を挙げて、今回の問題を招いてしまった“風土”を認識し、経営陣以下の全従業員がそれを変えていくという覚悟を持って臨まない限り、根本的な解決には至らない。

(撮影:今 祥雄)

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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