白斑問題を招いた、カネボウのたこつぼ風土 花王の改革も及ばず、クレーム情報が死蔵

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第三者調査委員会の中込秀樹弁護士(左)はカネボウ内部の問題を厳しく批判した

カネボウの顧客情報管理システムは、機能不全に陥っていた。そして、それを招いた原因はカネボウ自身の“風土”にある。

入社時の配属から異動がほとんどない人事制度

「(各部門が)互いにフィードバックしたり、分析し合ったりという機能が極めて脆弱な、当社の組織体制に問題があった」。カネボウ化粧品の夏坂真澄社長は9月11日、第三者調査委員会の報告に続いて開いた会見でこう語った。カネボウは社員の専門性を高めるため、入社時に配属された部署からほとんど異動がない人事制度を採ってきた。そのため、施策の判断や実行において各部門の独立性が高まる一方、部門間での情報共有や業務連携が進まない“たこつぼ化”が進行した。これが、白斑問題の根本にあると言ってもいい。

実は、カネボウでは、親会社である花王が独自に開発している顧客情報管理システム「エコーシステム」を2009年から導入している。花王と品質管理の物差しをそろえ、顧客の声を即時に共有できる体制を築くという目的だった。

ところが、運用面では統一化が徹底されなかった。花王ではクレーム・相談内容の同システムへの全件入力が義務づけられている一方、カネボウでは窓口担当者、店頭美容部員などが直接応対し、その場で解決したものについては入力を省略している場合もある。

さらに今回の白斑症状については、「病気であり、化粧品とは無関係」という同社の研究開発側の「思い込み」(中込氏)があった。そのため入力されていた情報についても、より重要な情報として扱われる「身体(肌)トラブル」ではなく、重要度の低い「問い合わせ」として登録されていたケースが複数あった。

それでも、カネボウ社内が“たこつぼ化”せず、社内の風通しがよければ、顧客情報管理システムの整備にかかわらず、問題が認識された可能性もある。だが、結局のところ部門間で情報が寸断され、連携も悪いという“風土”によって、経営陣が情報を把握するのにはかなりの時間を要してしまった。

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