「オレ自慢」が近年増殖するのにはワケがある

リアルでもネットでも"アピール"する男たち

次に、イクメンについてです。「いい学校を卒業して、いい会社に入り、幸せな家庭を築く」という人生コースにおいて、男性への期待は稼ぎ手としての役割が大部分を占めていました。したがって、正確には、競争のゴールを「いい学校を卒業して、いい会社に入り、性別役割分業に基づいた幸せな家庭を築く」と言いなおす必要があります。

性別役割分業を前提とした社会では、男性は働いてさえいれば後ろ指をさされることはありませんでしたが、2010年にイクメンが流行語になってからは、家事や育児に協力的な男性への評価が高くなり、男性の「働いてさえいればいい」という意識は一気に通用しなくなります。自分の生活のすべてを仕事に注ぐことで社内での地位を得てきた男性にとって、このような価値観の転換は脅威です。

一元的な価値観で生きてきた男性にとって…

最後に、ダイバーシティの推進が、「成功」した男性に与える影響について見ていきます。競争に勝つことが「幸せ」という一元的な価値観で生きてきた男性にとって、多様な生き方を認めようという主張は受け入れがたいものです。せっかく「努力」して他人を打ち負かしてきたのに、それ以外にも「幸せ」になる方法があるのは納得がいかないからです。

さらに指摘しておきたいのは、社会の中で「働かない男性はクズだ」「独身の中高年男性は残念な人が多い」といった偏見が共有されてきたから、それとは対極にある「仕事に専心する既婚男性の生き方」の価値が認められてきたという点です。しかし、ダイバーシティが重要な価値として認識されるようになれば、職業、結婚、そして、性的指向に対する差別に支えられた彼らの優位な立場は、足元から崩れていきます。

以上のことから、女性活躍、イクメン、そしてダイバーシティの推進は、社会的地位の高い男性にとっては、自分の存在価値を脅かす潮流であるといえます。だから、競争に負けた男性だけが意味不明な自慢話をしていた時代と比較して、さらに多くの男性が「すごさ」をアピールするようになったのです。

意味不明の自慢話とネット上での攻撃的な態度に共通しているのは、いずれも一方通行の自己満足であり、他人がどのように感じるのかがまったく考慮されていないという点です。コミュニケーション能力の欠如と言い換えることもできます。

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