「オレ自慢」が近年増殖するのにはワケがある リアルでもネットでも"アピール"する男たち

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筆者が収集している「妻にとって夫がストレス」だという内容の本(写真:筆者提供)

最近、研究のために、妻にとって夫がストレスだという内容の本を収集しているのですが、たとえば、 1993年に出版された医師の黒川順夫による『主人在宅ストレス症候群』の帯には、妻が悩まされる要因として、夫の定年、病気に加えて、週休二日制が挙げられています(写真)。要するに、コミュニケーション能力に欠けた夫と一緒に過ごす時間が増えれば、それだけ精神的な苦痛になるのです。

ネットのコメント欄は見なければ済むとして、結婚すれば夫が、既婚/未婚問わず働けば男性の同僚や上司が、女性にストレスをもたらします。男性の立場からしても、気がつかないうちに、他人に迷惑をかけているのは本意ではないはずです。男性のコミュニケーション能力の欠如という問題は、性別を問わず解決に向けて取り組む意義のある課題だといえます。

「支援」を必要としているのは男性かもしれない

1980年代の教育社会学の研究では、イギリスの学校において、男子が人の意見に耳を傾けるのが苦手で、反駁や嘲(あざけ)りで互いに主張し合っていると報告されています。その後、イギリスでは、1994年に義務教育修了者を対象にした全国共通試験の結果が公開されるようになって以来、「男子の学業不振」に注目が集まりました。さらに付け加えると、イギリスに限らず、世界的な傾向として「読解力」の平均点は男子よりも女子のほうが高いことが確認されています。

日本では、学校でも会社でも男女の問題について「支援」といえば、その対象は女性のイメージです。しかし、コミュニケーション能力の問題で、「支援」を必要としているのは男性ではないでしょうか。

もちろん、有利な立場にいる男性への「支援」に対しては、納得がいかない女性も多いと思います。中高年男性の再教育は可能なのか。費用と時間に見合うだけの成果は得られるのか。そして、最も説得力があるのは、そもそも、自業自得なのだから放っておけばいいのではないかということです。

しかし、男性が問題を抱えたままだと、被害は当事者の男性だけではなく、女性にも降りかかってきます。「しょせん、男と女はわかり合えない」などという安易な結論に飛びつく前に、抵抗があるかもしれませんが、少し歩み寄って男性のコミュニケーション力について一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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