ネットは「テレビのあり方」を変え始めている 「放送枠を持つ者」だけでは生き残れない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ドラマ「明日への約束」はGYAO!を通じたネット配信に力を入れる(関西テレビ公式サイトより)

関西テレビの放送外コンテンツへの意識の強さは、10月17日にスタートした火曜9時「明日の約束」におけるGYAO!との協業にもつながっている。

これまでも放送コンテンツの続きを有料ネット配信に続ける手法があったが、今回の協業はテレビ放送枠のドラマとしては単独で完結するつくりとし、各エピソードの間にあるエピソード「チェインストーリー」――例えていうなら、エピソード1.5、エピソード2.5をネットで配信することで、ドラマに深みを出していくという試みだ。

同時に関西テレビとしては初めて本格的なドラマの見逃し視聴サービスをGYAO!から無料配信し、そのうえでGYAO!と共同制作となる中間エピソードの配信を行うことで相乗効果を狙う。

Netflixへの4Kドラマ提供にもつながっている

“放送枠を持つ者”ではなく“コンテンツを作るもの”、このような意識改革や質にこだわったドラマ作りの意識は、MIPTVへの出展とは連動していないとはいえ、春に発表されていたNetflixへの4Kドラマ提供にもつながっているという。フジテレビ系の関西テレビだけに、Netflixとの関係が深いフジテレビとの共同提案かとも想像していたが、本件は無関係だそうだ。

撮影に使用するカメラの4K対応作品へのリプレースを進める中で、長らく4Kでの番組制作を行っていたことが、コンテンツの4K化をいち早く進めるNetflixの目に留まったのが理由だ。4K制作初期はナチュラルヒストリーやドキュメンタリーの4K化が先行しがちだが、カンテレはドラマ制作はもちろん2014年にはバラエティ「新TV見仏記」を4K制作するなど、多様なジャンルの番組を4Kで撮りためていた。それらを配信業者に4Kで提供したことが生きてきた。

人気コミックであり、アニメ、映画としてもファンを引き付けた『僕だけがいない街』の古川雄輝主演・連続ドラマ版をこの冬、Netflixオリジナル4K版として世界190カ国で配信される。Netflixオリジナル作品は、独占配信期間によって契約が異なり、多くの放送局は自社での放送などを意識して独占配信期間を短く設定しているが、関西テレビは“コンテンツメーカー”としてNetflixでの長期配信を選んだ。

「放送局として頑張るだけでは限界もありますから、映像制作を行う組織として何ができるかを今後も模索していきます」(岡田氏)

放送局としては珍しく“放送枠にこだわらない姿勢が強い”という理由から関西テレビの事例に注目してきたが、数は少ないものの近年にもいくつかドラマ系の成功事例はある。たとえば、トルコでは日本テレビが制作した松雪泰子主演の「MOTHER」がトルコでヒット。今春のMIPTVでは現地リメークが発表されていたが、リメーク版も好評を得て今度はトルコ・リメーク版の「MOTHER」が、開催中のMIPCOMで大々的にセールス展開されるなどの循環も見られる。

「海外市場など見てられない」という本音

一方で構造的な問題はやはり残る。

在京キー局で海外セールスを担当してきたある人物は、「日本の場合、テレビ局が映像制作の核としてあまりに強すぎる面がある。ネット配信も海外ほど普及していないため“最低限の制作予算を調達する”ことを前提に考えると、海外市場など見てられない。全国ネットで幅広い視聴者層に訴求して視聴率を稼がねばならないため、映像作品としての完成度よりも、過剰な演出によってあおる傾向が強い」と指摘する。

たとえば、ドキュメンタリーやスポーツイベントの中継。グローバルな基準では、著名タレントや俳優が司会として入って番組を進め、語り部として番組の理解を促す番組は“バラエティ”ととらえられるが、日本ではそうした演出がなければ在京キー局が受け入れてくれるドキュメンタリーとはならない。

次ページ一等地の地主だけが潤う環境では…
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事