欧州サッカー、知られざる胸スポンサー効果 日本企業が続々進出、リバプールFCが先駆け

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もちろん、世界的に露出して終わりというわけではない。胸スポンサーのメリットをうまく活用した事例として紹介したいのが、現在リバプールFCの胸スポンサーであるスタンダードチャータード銀行のCSR(=企業の社会的責任)活動の活性化である。

スタンダードチャータード銀行はロンドンに本拠を置いているが、アジア、アフリカ、中東に多くの顧客を抱えている。プレミアリーグでもっとも歴史あるリバプールFCと手を組むことによって、彼らはこのクラブのファンの多い地域での認知向上だけでなく、“信頼の獲得”を狙ったのだ。

その一環として現在も行われているのが、ユニフォームに掲載する社名を年に1回「Seeing is Believing」のメッセージに置き換えるCSRキャンペーンである。このメッセージは、スタンダードチャータード銀行がブラインドサッカーなどを通して視覚障害がある人々を支援していることを表現したものだ。

この活動は2003年に同銀行150周年イベントの一環としてスタートしている。現在ではリバプールFCのスポンサー活動において、ユニフォームを活用して自分たちの思いやあり方を伝えることにより、銀行への信頼、そして新たなファン(潜在的顧客)の獲得による「企業価値の向上」を狙っているのである。

また、同銀行は「グローバル・ゴールズ」というCSRキャンペーンも行っている。これは、世界の193人のリーダーが貧困解消、飢餓撲滅、良質な教育の獲得、男女平等など17の目標を掲げ、2020年までにサポーターと共にクリアすることを打ち出したキャンペーンだ。

このキャンペーンを認知させる手段としても、同じく年に1回ユニフォームの社名を「#GLOBALGOALS」の文字に入れ替えている。選手の胸の文字を変化させることにより、視聴者や観戦者はこのキャンペーンをいち早く、そして高い確率で認知することができるのだ。

欧州クラブとのパートナーシップは世界進出の宣言

リバプールFCのサポーターの多くは、パートナーシップによってすでに好印象を抱いていたこの銀行に対し、CSRの要素が加わることでさらにポジティブな理解、つまり“信頼感”を抱くようになった。胸スポンサーは、自分たちが何者であるか、どんな思いのもとで事業を展開しているのか、そのメッセージを世界に発信する最強ツールの1つだと考えられる。

そのツールを現代でいち早く活用しようとしているのが楽天であり、横浜ゴムなのだ。そして、胸スポンサーではないものの、2017年にユベントスFCのスポンサーとなったサイゲームスや、リバプールFCのスポンサーである住友ゴムのFALKEN(ファルケン)ブランドも、スポーツの力を活用するメリットを十分に知っているはずだ。彼らにとって欧州サッカークラブとのパートナーシップは、「これからグローバルのトップを目指して世界で戦っていく」という宣言と言えるだろう。

岡田 真理 ライター

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おかだ まり / Mari Okada

1978年静岡県生まれ、立教大学文学部卒業。プロアスリートのマネジャーを経て2007年よりフリーランスライターとして活動。『週刊ベースボール』『がっつり!プロ野球』『スポーツナビ』などで執筆するほか、『谷繁流キャッチャー思考』(日本文芸社)『北島康介トレーニング・クロニクル』(ベースボール・マガジン社)などの書籍で構成を担当。2014年に野球を通じてチャリティーなどの社会貢献活動を行うNPO法人「ベースボール・レジェンド・ファウンデーション」を設立。「プロ野球静岡県人会」の事務局長、および侍ジャパンU12監督・仁志敏久氏が主宰する野球振興プロジェクト「ホームベースクラブ」の運営も行っている。

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