欧州サッカー、知られざる胸スポンサー効果 日本企業が続々進出、リバプールFCが先駆け

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サッカーの母国であるイングランドのプロサッカーチームで初めて胸スポンサーを募ったのは、プレミアリーグのリバプールFCだ。このクラブは熱狂的なサポーターを持つことで知られている。リバプールFCによると、欧州、アジア、アフリカなどを含めサポーター数は全世界で7.7億人という。リーグ優勝18回、欧州制覇5回という栄光こそ、サポーターたちの強い忠誠心の理由だろう。チームの功績とファンの情熱の象徴と言われているユニフォームに初めて社名を入れたのも、実は日本企業だった。1979年から3年間リバプールFCとパートナーシップを結んだ日立である。

これまでリバプールFCのユニフォームに社名を載せることを許されたメインパートナーは、日立、クラウン・ペインツ(イングランド)、キャンディ(イタリア)、カールスバーグ(デンマーク)、そして現在のスタンダードチャータード銀行(イングランド)の5社のみだ。

しかも、カールスバーグとスタンダードチャータード銀行は何度も更新を重ねており、結果的に前者が18年(1992~2010年)、後者が9年(2010~2019年)と、計27年をこの2社が守り抜くことになる。

この事実から、パートナー企業側が巨大な投資の効果をきちんと得られていることがうかがえる。ちなみに、カールスバーグはメインスポンサーの契約が満了してからも別の形でリバプールFCとパートナーシップを組んでおり、メインスポンサー時代も合わせると25年間も関係が続いている。これは、プレミアリーグでは最長のパートナーシップだ。

英プレミアリーグは200以上の国や地域で放送

欧州サッカーとパートナーシップを組む企業がまず求めるのは、やはり世界的認知の拡大だろう。たとえば、英プレミアリーグは現在200以上の国や地域で放送されており、ライブはもちろんニュースでも試合映像のハイライトが各国で流れている。

視聴者はCMを早送りすることはあっても、選手が映っているシーンをスキップすることはほぼない。ゴールや勝利の瞬間など、確実に視聴者に届く映像の中には必ず社名が含まれることになり、それが各国に発信されれば世界的認知度の向上が期待できる。

胸スポンサーがほかの看板スポンサーなどと違うのは、フィールド内だけでなく、選手の記者会見、選手のイベントやメディアの出演、選手の写真入りオフィシャルグッズ、選手がユニフォームを着て出演する広告、そしてサッカーのゲームソフトの画面まで、選手が登場するあらゆる場所で社名の露出が見込めることである。

海外での認知度が高くない日本企業にとっては、テレビCMや一般的な広告で同じレベルの効果を得ることを考えると、高額な契約料でもコストパフォーマンスはむしろいいと判断できるのではないだろうか。

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