日本の「破綻」は、もはや杞憂と言い切れない 大義なき選挙戦の裏で財政再建が置き去りに

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縮小

そういう意味では、黒田東彦日銀総裁の責任は重い。しかし、その黒田総裁も責任を取らず任期切れで2018年4月8日には退官してしまう可能性がある。次期総裁は、出口戦略という重い課題を抱えての就任になりそうだが、1980年代後半のバブル後に就任した三重野康総裁のような運命をたどることになるかもしれない。

とりわけ問題なのは、今回の総選挙でどの党が勝利しても、財政再建が置き去りにされてしまうことだ。しかも、FRBは10月には金利引き上げと同じ効果を持つバランスシートの縮小をスタートさせ、12月には4回目の利上げに踏み切ることがほぼ確実視されている。

カナダはすでに利上げを実施し、イギリスの利上げもカウントダウンに入っている。EUも10月には、量的緩和の縮小を協議し始める。

日本だけが現在のレベルの金融緩和策を続けることになるわけだが、それが本当に可能なのか不透明だ。急速な円安が進む可能性もある。円安が進めば、原材料の輸入コストの増大や賃金上昇などによって生産コストが上昇。その結果として2%の物価上昇率が達成できればいいのだが、これまではそれでも物価は動かなかった。

ただ、日本以外の先進国が金利を引き上げたときには日本の金利も少しずつ上昇させておく必要がある。それを怠ると、世界の金利水準が下落したときに超円高が襲ってくる可能性があるからだ。

カウントダウン開始は「格下げ」?日本破綻のシナリオ

日本政府が財政再建を放置したときに、もうひとつ心配になるのが「格下げ」の問題だ。

衆院解散の発表直後、日本国債の長期金利が0.08%まで上昇。すぐに日銀などが抑えつけて再び下落したものの、格付け会社の日本国債格下げは日銀でもコントロールできない。

現在の日本国債の格付けは以下のとおりだが、日本国債は21世紀に入ってから1度もトリプルAになったことがない。これらの格付け会社が動くとしたら、今後は「Baa」「BBB」といった、投機的格付けの一歩手前になる可能性もある(2017年9月30日現在)。

●S&P……A+(安定的)
●ムーディーズ……A1(安定的)
●フィッチ・レーティングス……A(安定的)

長期金利やCDSスプレッドの上昇次第では、一気に格下げされる可能性もある。「BB」「Ba」といった「投機的格付け」にまで一気に下落したとき、日本政府や日銀はどんな対応策を取れるのか。そもそも対応策を考えたことはあるのか、と心配になる。

残念ながら、黒田総裁の定例会見における記者とのやり取りを見てみると、日銀記者クラブの記者たちは、そんな質問すらしない。将来の出口戦略に対する質問でも、黒田総裁は議論すらしていないことをにおわせるだけだ。

現在の金融市場というのは、リーマンマンショック直前のように、不動産価格高騰やクレジットバブルに対して警戒感がなくなり、市場も「ゴルディロックス(ぬるま湯)」を看過していた姿に似ているところがある。あのリーマンショックを振り返れば、欧州の小さなヘッジファンド会社の破綻がきっかけで、ある日突然一気に信用リスクが拡大した。

日本国債の信用バブルが崩壊したとき、金利はハネ上がり、当初は超円高になるものの、やがてCDSスプレッドがハネ上がる。仮に国家破綻級のリスクを示す400ベーシスポイント(4%)に達すれば、超円安が進み、日本は貨幣価値が変わるほどの超インフレが訪れるかもしれない。

日本の財政赤字は貨幣価値の変化でチャラになるかもしれないが、銀行預金や現金が紙くず同然になり、年金生活も成立しなくなる。そんな時代が来る可能性だってある。ただ、残念なことに、今回の選挙では財政再建を積極的に推進する政党を選びたくても選択肢そのものがない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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