オリンピック招致の勝因は、滝川クリステル グローバルエリートが東京オリンピック決定を祝福

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最終プレゼンの、巧みな戦略的コミニュケーション

さて、最後に今回の最終プレゼンへの講評を、IOCメンバーとは別にグローバルエリートが提供すると、戦略的に訴えるべきポイントを上手くつかんでいた。あからさまではなく自然な形で他のライバル都市が抱く財政上・治安上の問題点を突き、IOCにとって最大級の関心事項であろう商業上の利益の大きさもアピールできていたし、総じて具体的でイメージの湧きやすいプレゼンができていた。これは今回雇ったという、リオやロンドン五輪招致を成功に導いたイギリス人コンサルタントの影響が大きかったのだろうか。

各プレゼンターごとに訴求するポイントの役割分担が明確にできており、IOCで影響力の強いフランス・カラーをクリステルさんが存分に出せていたのも効果的だっただろう。映像も総じてクオリティが高く、英語が下手でスピーチだけでは負ける分、優れた映像コンテンツで強力に補完できていた。

グローバルエリートから、お祝いのメッセージ

今回、めでたく東京五輪の招致に成功したわけだが、こころよりお祝いの言葉を申し上げたい。東京五輪チームのプレゼンが終わった後、香港のセントラルに繰り出し、ちょうど韓国人の友達と飲んでいたので、「今回の五輪開催、どこを応援してるのか」と聞いてみた。

まずは他の国の友人に聞いた時と同様、五輪開催都市の発表のことも、どこの国が出馬してるかも知らなかったのだが、東京・マドリード・イスタンブールのことを話せば「もちろん、東京でょ」と返答する。

「またまた~、俺が韓国人とはいえ、日本で生まれ育ったから、それを気にして言っているんでしょ(ちなみに私はネトウヨの皆さんには反日と言われ、韓国では親日派と言われ、サンドイッチ状態で独自の路線を行っているが、私はどちらにも属さない、単なる国際親善の求道者である)」と言ってみたところ、以下のような回答が返ってきた。

「両国の政治家同士で問題が多いから、東京五輪を応援するとかいうと嘘とか言われるが、日本が上手くいってこそ韓国も含めたアジア全体が上手くいくんだから、日本を応援するのは当然のこと。この国境が関係なくなるグローバル時代に、何いってるの!」

これは私が先日のコラムで私が主張していたポイントと同じである。

ちなみに私のフェイスブックでは、中国の友人からの”Congrat, Tokyo”の書き込みもかなり目立っており、中国にも韓国にも東京五輪支持派はたくさんいる。どこの国にもネットで他国への暴言を繰り広げている“ネトウヨ派”がいるが、逆にどこの国にも友好的で建設的な関係を臨む“グローバルエリート派”がいるものであり、東京オリンピックを通じて各国の相互理解を促進させたい。

なお、ヘイトスピーチ団体が五輪招致の完了を受けてヘイトスピーチを再開したらしいが、東京を信じて投票してくれた世界に対し、恥ずかしくないのだろうか。

ただ私は“在特会”の末路に関しては楽観的で、国際的に知られたら恥ずかしいという日本の良識が沸き起こり、彼らこそ“日本の不利益”であると社会が悟り、在特会は早晩、“ヘイトビジネス”からも失業することになろう。

実際の交流を通じて相互理解を

私は来たる2020年の東京五輪の成功を韓国、中国の周辺国が大いに応援し、また政治の対立を切り離して北朝鮮を含めた北東アジア各国が信頼醸成の契機とすることを願っている。関係が悪化しているからこそ、逆にすさまじい厚遇で迎えて驚かせてはいかがか。

メディアやネットでは、双方の国に対する実像とはかけ離れた憎悪の言葉が一部の人々により応酬されているが、実際に交流してみるとそのほぼ全てが、相手方と交流したことのない人によるフィクションであることがすぐわかるのだから。

東京五輪を契機に各国が共通の市場、共通の利益を実感し、外交関係が強化されるきっかけになることを切に祈りたいと思った、香港の一夜であった。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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