あなたのその癖にはどんな意味があるのか 無意識でやっている指鳴らしや貧乏ゆすり
やろうと思って始めるものではないものの、周囲からやめてくれと言われたり、ほかのことに気を取られればやめることはできる。だが問題は、やめたところでまた、同じことを繰り返してしまうことだ。場合によっては本人にとって大きな苦痛をもたらすし、周囲の人のいらだちの種になることはさらに多いだろう。
コロンビア大学医療センターでBFRBを専門とする臨床心理学の専門家、アリ・マットゥによれば、医療機関を受診するレベルであろうがなかろうが「こうした反復行動は大脳基底核という運動の制御に関係する脳の部位と関係がある」という。
研究はまだ進んでいないものの、大脳基底核は体の動きに関する指令センターのようなもので、過去に身に付けた動きやジェスチャーの中から適切なものを選択して周囲の状況に対応しようとする。だが、不満やストレスの多い状況に置かれると、刺激が多すぎる(もしくは少なすぎる)せいで、大脳基底核はデフォルトの動きを選ぶ(もしくはそれをやめない)ことで対応しようとし、それが反復行動となるのではないかと考えられている。
大半の反復行動は子ども時代から
そうして考えると、私たち人間も動物と違いはない。動物園では不安や退屈を感じた動物たちが体を揺らしたり、頭を急に動かしたり、自分の羽を引き抜いたり、ぐるぐる歩き回ったり、腕を振ったり、自分や物をかんだりする姿がしばしば見られる。
「(体を動かす)癖で留意すべき点は、認知的なリソースを使う必要がないということだ」と語るのはマーケット大学(ミルウォーキー)のダグ・ウッズ教授(心理学)だ。ウッズはチックなどの反復行動を研究するとともに患者の治療に当たっている。彼によれば、患者の多くはチックを通し、一時的な気分転換や満足感、解放感といった「見返り」を手にしている。
原因はどうあれ、大半の反復行動は子ども時代に始まっている。まだ未成熟な子どもの脳は大人のように感情を認識したり処理することができないため、気持ちのやり場を見つけようとして体を動かすのだ。重度の自閉症児を別にすれば、たいていの子どもは成長するにつれ自分の感情を理解してうまく対処できるようになり、反復行動を卒業できる。
体の動かし方を社会的に受け入れられやすいものや大人らしいものに変えるというケースもある。たとえば体を揺らすのをやめて足をトントンと動かす行動に変えたり、口を大きく開く代わりにガムをかんだり、指を細かく動かすのをやめてスマートフォンをいじったり……。
「こうした行動はいつまでも残る。自分で動きをコントロールできるようになったり、自分1人でこっそりとまたはテーブルの下でやる方法を身に付けるというだけのことだ」と語るのはジョンズ・ホプキンス大学医学大学院のハーベイ・シンガー教授(神経医学)だ。シンガーは子どもの常同症の専門家だ。
体を動かす癖を理由に医療機関を受診する人は少ないどころか、こうした癖を心地よく感じている人は少なくない。専門家に助けを求めるとすれば、体が動いたり声が出てしまう状態が頻繁に起きて長い時間続き、日常生活や人間関係に支障が出る場合だ。