スマホやSNSに「依存」するのは理由があった 知られざる「行動依存症」の実態
社会心理学者のアダム・アルターは、子どもから大人まで多くの人がデジタル機器の依存症になっていると、近著の『イレジスタブル(Irresistible:抵抗できないの意)』で警告する。
アルターはニューヨーク大学スターン経営大学院の准教授で、心理学とマーケティングを研究している。ニューヨークタイムズは最近、彼に2時間のインタビューを行った。
1日にアプリを18回起動
――デジタル機器やソーシャルメディアの依存症になっている人がいると考えるのはなぜか。
昔は、依存症はほとんどが化学物質に関係していると考えられていた。ヘロインやコカイン、ニコチンなどだ。今日では行動依存症(behavioral addiction)が見られる。たとえば、あるテクノロジー業界の幹部によると、人々は1日に3時間近くもスマートフォンに時間を使っているという。10代の男子では、何週間も部屋でゲームを1人でやっているケースがある。また、若い人はスナップチャットのアプリを1日に18回以上立ち上げる。
行動依存症は今日ではかなり広がっている。2011年の研究によると、41%の人が少なくとも1つの行動依存症になっているという。今では、当時よりもさらに中毒性の高いソーシャルメディアのプラットフォームやタブレット、スマホが開発されており、この数字は確実に上昇しているはずだ。
――「依存症」の定義は?
短期的には楽しめるが、長期的には利用者の健康や幸福を損なうもので、それにもかかわらず衝動的にやってしまうこと、と定義している。
私たちは生物学的に、ゲームなどに病みつきになりやすい。誰かをスロットマシンの前に座らせると、その人の脳はヘロインを摂取したのと質的に同じような状態になる。衝動的にビデオゲームをする人(すべての人ではなく、特定のゲームに依存している人)は、ゲームを立ち上げた瞬間に、脳が薬物乱用者のような様子になる。
人間は、正しいボタンが押されると、神経伝達物質のドーパミンを分泌するようにできている。短期的には、大量のドーパミンでいい気分になるが、長期的には耐性ができて、もっと欲しくなる。