あなたのその癖にはどんな意味があるのか 無意識でやっている指鳴らしや貧乏ゆすり

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首を動かすチックは脊椎骨を痛める原因になりかねないし、肌をひっかく癖があればかさぶたができて見た目が悪くなる。就職試験の面接の最中にまばたきばかりしていては採用は望めない。デートの邪魔になるのは言うまでもない。

コミュニケーションの1形態

そうした癖をやめさせるために、医師はまず、抗ヒスタミン剤や抗うつ剤、ADHD治療薬、メタンフェタミンやヘロインといった薬物が症状の悪化をもたらしている可能性がないか確認する。そうした原因がないならば、無意識にやっているチックや体を動かす癖を本人にしっかり意識させるところから治療は始まる。セラピストとのカウンセリングもよく使われる手段だ。前兆があるならどんなもので、その後の動きはどういったものかを細かく語らせるのだ。

また、いつ症状が起きるかを把握するのも重要だ。

「人ははっきりと認識してはいないが、こうした問題が起きる状況には特徴がある」と、モントリオール精神衛生大学研究所のキーロン・オコナー教授(精神医学)は言う。オコナーはチックなどに悩む人々の治療プログラムを開発している。

「チックや体を動かす癖が起きやすい状況というものがある。だからわれわれは、そうした問題となる状況を患者がこれまでとは違った形で評価できるよう支援している」

症状は、予想外の出来事に見舞われたり、対処の仕方がわからなかったりして強いショックを受けた場合に出ることも多い。

「われわれは、患者に足りないのが感情への気づきなのか、感情への理解なのか、感情の処理なのかを見極めようとしている」とオコナーは言う。

セラピーではしばしば、いつもの癖の代わりとなるもっと受け入れやすい行動や、癖を防止するすべを探すことも行われる。指を鳴らす代わりにボールを握ったり、あごを引くことでうなずきを繰り返すのを止めたり、顔をいじるのを防ぐために拡大鏡を置くのをやめたり……。

もっと深刻なケースでは向精神薬の投与やボツリヌス毒素の注射のほか、脳の深い部位を刺激する機器の使用も検討されるかもしれない。もっともこうした方法を採っても高い効果が期待できるとは限らないうえ、リスクは大きく不快な副作用に見舞われる可能性もある。

専門家の間ではチックや体を動かす癖についての共通認識が生まれつつある。まず、こうした行動はコミュニケーションの1形態だということ。そして悩める人を救うには、チックや癖を止めたり、やり方を変えたり代替行動を取らせようとするよりも、それらが伝えてくるもの(不安や退屈、怒り、悲しみ、緊張など)をまず理解することが大切だということだ。

要するに、ハンドスピナーを持たせるのは一時しのぎにはなっても、長い目で見た改善にはつながらないということだ。

(執筆:Kate Murphy記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2017 New York Times News Service

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