「働き方法案」に潜むブラック要素を検証する 「成果で賃金を支払う」もウソ?
再び甦った「残業代ゼロ法案」
「働き方法案」には、企業が、あの手この手で残業代を払わずにすむ『残業代ゼロ法案』が仕込まれている。
まず、新たに導入を目指す『高度プロフェッショナル制度』(以下、高プロ)。労働問題に詳しい佐々木亮弁護士が解説する。
「高収入かつ、高度な専門職の労働者が対象です。平均年収の3倍以上、つまり年収1075万円以上で、専門性の高い職業に就いている人。具体的には、為替のトレーダー、研究職などが挙げられています」
この条件に該当すれば高プロ導入後、労働基準法の保護からはずされてしまう。
「企業などの雇い主は、1日8時間、週40時間までしか労働者を働かせてはならないという規制がなくなり、残業代を払う義務もなくなります。残業代ゼロ法案と言われるゆえんです」(佐々木弁護士、以下同)
このほかに労働基準法では、働く時間が6時間で45分、8時間では1時間の休憩をとらせなくてはならないと定めているが、この規制も及ばない。また、休日出勤や深夜労働したときの割増賃金も、払う必要がなくなる。
「休日も休憩も、労働時間も、雇い主がその責任を負うのではなく、労働者が自分の判断で勝手にやってくれということ。
労働時間の上限がなくなり、企業は好きなだけ働かせることができるため、長時間労働の温床になってしまいます」
政府がまとめた『働き方改革の実行計画』には、「柔軟な働き方」「多様な働き方」などのキャッチコピーが躍り、「時間に縛られない自由な働き方」の早期実現が掲げられている。高プロも、その一環だ。
「高収入で高度な専門職ともなれば、自分の判断で自由に働けるはず、というのが政府の考え。しかし実際は異なります」
そう指摘するのは、労働ジャーナリストで和光大学教授の竹信三恵子さん。
「高収入でも高専門でも、組織や上司から命令されれば、言いなりになって働かざるをえない仕事はたくさんある。いちばんわかりやすいのが医師。高収入の高度な専門職ですが、過労死しています」