「働き方法案」に潜むブラック要素を検証する 「成果で賃金を支払う」もウソ?

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知らなかったではすまされません(写真 : foly / PIXTA)
いつまでも終わらない仕事に、休めない会社。パワハラ、職場いじめは日常的で、給料だって上がらない……。「働き方」に向けられる視線はかつてないほど厳しいというのに、そこで出てきた「働き方法案」にも大きな心配が。会社員も派遣労働者も、パート主婦も知っておくべき、その中身と影響を徹底検証します。

再び甦った「残業代ゼロ法案」

当記事は「週刊女性PRIME」(運営:主婦と生活社)の提供記事です

「働き方法案」には、企業が、あの手この手で残業代を払わずにすむ『残業代ゼロ法案』が仕込まれている。

まず、新たに導入を目指す『高度プロフェッショナル制度』(以下、高プロ)。労働問題に詳しい佐々木亮弁護士が解説する。

「高収入かつ、高度な専門職の労働者が対象です。平均年収の3倍以上、つまり年収1075万円以上で、専門性の高い職業に就いている人。具体的には、為替のトレーダー、研究職などが挙げられています」

この条件に該当すれば高プロ導入後、労働基準法の保護からはずされてしまう。

「企業などの雇い主は、1日8時間、週40時間までしか労働者を働かせてはならないという規制がなくなり、残業代を払う義務もなくなります。残業代ゼロ法案と言われるゆえんです」(佐々木弁護士、以下同)

このほかに労働基準法では、働く時間が6時間で45分、8時間では1時間の休憩をとらせなくてはならないと定めているが、この規制も及ばない。また、休日出勤や深夜労働したときの割増賃金も、払う必要がなくなる。

残業の上限規制のイメージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日も休憩も、労働時間も、雇い主がその責任を負うのではなく、労働者が自分の判断で勝手にやってくれということ。

労働時間の上限がなくなり、企業は好きなだけ働かせることができるため、長時間労働の温床になってしまいます」

政府がまとめた『働き方改革の実行計画』には、「柔軟な働き方」「多様な働き方」などのキャッチコピーが躍り、「時間に縛られない自由な働き方」の早期実現が掲げられている。高プロも、その一環だ。

「高収入で高度な専門職ともなれば、自分の判断で自由に働けるはず、というのが政府の考え。しかし実際は異なります」

そう指摘するのは、労働ジャーナリストで和光大学教授の竹信三恵子さん。

「高収入でも高専門でも、組織や上司から命令されれば、言いなりになって働かざるをえない仕事はたくさんある。いちばんわかりやすいのが医師。高収入の高度な専門職ですが、過労死しています」

次ページ成果で賃金を支払うなんて法案のどこにも書いていない
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