残業代ゼロは年収4000万円超からでよいのか 若者は「働かないオジさん」に搾取されるな

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「働かないオジさん」に多額の残業代が支払われているとなれば、そのシワ寄せが誰にくるのかを考えなければいけません(写真 : プラナ / PIXTA)

フリーランスで働いている人にとっては、「働いた時間ではなく、成果で報酬を決める」という考え方は、当たり前のような話です。しかし、日本の労働法はそのような立て付けになっていません。労働法上の大原則は、「働いた時間に応じて割増賃金(残業代)」を支払うことになっていることは周知の事実でしょう。

「高プロ」導入理由の建前と本音

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昨今、「高度プロフェッショナル制度」(以下、「高プロ法案」)の議論が盛んになっています。この制度は、年収1075万円以上の高所得層で、特定の高度専門業務(たとえば、金融商品の開発、ディーリング業務、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務など)の人に対し、労働時間規制を外すものです。なぜ、いまこのような制度の導入が検討されているのでしょうか。

政府や経団連などの主張を見ると、導入理由としては、「時間ではなく成果による働き方を制度としても後押しすべき」「通常の労働時間に拘束されない仕事のやり方を求めている」「特にホワイトカラーにおいては、考えることが仕事なので、通常の労働時間管理になじまない」といった理由が述べられていますが、正直に申し上げて、これは建前です。では、本音は何か。少なくとも当面の目標は、年功序列賃金の下、高くなりすぎた「働かないオジさん」の処遇を下げることです。日本の労働法では解雇規制と賃下げ規制が厳しく「働かないオジさん」であっても、なかなか解雇や賃下げをすることができません。大企業を中心に、このような方は多数みられます。つまり、待遇と成果が見合っていない、部下を持たないベテラン社員などの賃金を抑制したいというもくろみがあるのです。

反対派の方々はとにかく「残業代ゼロ法案」というネーミングをつけて批判を展開するわけですが、この議論は表面的なレベルで終わらせてはなりません。これは、20~30代と、40代以降との、世代間不平等の是正につながる問題でもあるのです。

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