残業代ゼロは年収4000万円超からでよいのか 若者は「働かないオジさん」に搾取されるな

✎ 1〜 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

問題点をクリアにするために、まずは高プロ法案反対派の主張を見ていきましょう。反対派の主張の主なものは、①年収1075万円という基準が将来的に引き下げられる、②残業代ゼロの対象労働者が無限定に拡大される、③長時間労働による健康被害を生じるというものです。

まず、①の1075万円という基準について、「導入時は高く見積もっておき、後に省令で下げる腹づもりなのだろう」と基準の引き下げを警戒する向きがあります。しかし、高プロ法案は、厚生労働省の統計による「基準年間平均給与額」の「3倍の額を相当程度上回る」という条件がついています。これは法技術的な話になりますが、水準の引き下げは省令では不可能で、法改正が必要になります。つまり、民意を無視して勝手に変えることはできませんので、その批判は当たらないでしょう。

ブルーワーカーとホワイトカラーを区別すべき

②対象労働者の議論については、工場労働者などブルーワーカーと、知的労働を行うホワイトカラーをきちんと区別して論じるべきです。工場労働者の仕事は、働いた分だけ比例的に生産が行われます。そのため、時間比例的に賃金を払うというのは合理的なのです。

一方で、知的労働が主なホワイトカラーについては時間と成果が見合っていないケースがあるのもまた事実でしょう。たとえば「顧客へのよりよい提案を考える」という業務の場合、よいアイデアが3時間で思いつくこともあるでしょうし、10時間考え続けても思いつかない場合もあります。3時間でよいアイデアが思いついたケースと10時間でアイデアを思いつかなかったケースでは、現状の法律ですと、残業代がもらえるのは10時間会社で考え続けていたほうになります。

つまり、成果と時間比例の報酬が見合っていないことになります。このような業務であれば、時間ではなく、成果によって賃金を支払うほうが合理的といえます。そして、対象業務の点も法律で明記されていますので、対象拡大にはさらなる法改正が必要となるため、①と同じ議論になります。

③長時間労働による健康被害という点は、確かに労働者の健康確保を図ることは当然です。しかし、これは大前提すぎる議論で、別に高プロ制度に限った話ではありません。正社員でもパートでもアルバイトでも、健康確保が大事なことは当然だからです。

健康確保の論点と高プロ導入の是非は別の問題です。現に高プロ制度でも年間104日の休日取得を義務づけたり、産業医面談を条件とすることが検討されています。重要なことは、高プロ対象者の「健康確保をどうすべきか」という議論であって、導入否定の理由になるものではありません。

次ページ本当に導入すべき理由は何か
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事