変化に対応できる「頭づくり」
──日本人の精神の根幹から、日本型資本主義の誕生・歩み・衰退の流れを丹念に読み解き、再構築には何が必要か、考えを披露しています。
大蔵省に入省してから30年余り。それと重なる30年間は大変革の時代だった。心してきたのは、場当たり的に仕事をしていないか、変化に対応できる「頭づくり」をしているかだ。日本は、日本として進むべき道があるとすれば、近代化の歩みの中での伝統的な社会観、倫理観をもう一度見直して、そこにあった特質を再抽出し、時代に合うもの合わないものを見返して、生かしていくことだ。
──内外の議論を渉猟して、縦横に考察していますね。
経済危機と精神史・思考様式の分析が印象に残ったかもしれない。知の巨人たちの考察を比較し、組み合わせてみたら、欧米、日本の論者に共通の部分が意外に多い。たとえば渋沢栄一の勤勉・倹約の「士魂」。武士の精神が大事だと言っているが、これはヨーゼフ・シュンペーターの「企業家精神」に通じるし、マックス・ウェーバーの「戦士市民」やアルフレッド・マーシャルの「経済騎士道」をも彷彿とさせる。
日本人の精神史・思考様式に絞れば、丸山眞男に「忠誠と反逆」という有名な論文があり、これと山本七平などが分析した一揆や江戸時代の強制引退「押し込め」とのリンクが現代社会の解剖に大いに役立つ。ダメな君主は押し込めて、組織や家を守っていく原理だ。いろいろな事象を再構成し、総合化してみると、つながりが豊富で学べる点が極めて多い。
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