日本企業が「ボトムアップ型」に落ち着く必然

鎌倉時代から「イエ社会」が続いている

──貞永(じょうえい)式目(関東御成敗式目)の時代まで話は及んでいます。

エズラ・ボーゲルが解析するように中世、鎌倉幕府以来、日本人および日本はボトムアップのシステムだった。だから、そう簡単に直せるシステムではない。人材としてもワンマンのリーダーが出にくく、比較的短期で引きずり降ろされる社会構造になっている。

「イエ社会」が引き継がれている

田中 修(たなか おさむ)/学術博士(東京大学)。1958年生まれ。東大法学部卒業後、大蔵省入省。1996~2000年在中国日本国大使館勤務。帰国後、財務省主計官、信州大学教授、内閣府参事官を経て、2010年から財務総合政策研究所の次長を経て副所長。2016年から税務大学校長を兼務(撮影:今井康一)

──なぜですか。

武家社会は原型が戦闘集団のイエ社会。その頃から激しい領地争いの時代になり、全員一致して動かないと負けてしまう。これが今の日本企業に引き継がれている。

──形式的にも全員一致です。

衆議では、実際にはそうでなくても全員一致の形を取る。典型的なのが自民党。部会などでは大荒れしていても、採決時には反対派は姿を見せない。そして最後は部会長一任。あのシステムがまさにそう。

──「ごめんなさい」の謝罪も独特とも。

このところ、毎日のように誰かが記者会見で謝っている。とりあえず謝る人はそれ以上責めないという理屈で責任を解除する。イザヤ・ベンダサンが指摘していることだ。だから事が起きたとき最初に謝らないと、日本ではその後面倒なことになる。

──こういった思考様式の指摘は一般教養として学んだのですか。

大学の学部は法学だったが、西部邁、佐藤誠三郎といった元気な学者が当時たくさんいた。政治学の京極純一には、ベンダサンを読みなさいと何度も言われた。彼は柳田國男の民俗学と政治学を組み合わせ、授業の中に取り入れた。ベンダサン=山本七平ではなく、著作は七平と何人かの合作だといわれているが、その一人が京極なのではと思っている。

──見えない宗教「日本教」を発見した山本七平ですね。

一世を風靡した『日本人とユダヤ人』をベンダサンが書いて50年近くが経つ。だんだん忘れ去られようとしているが、あの本や『「空気」の研究』に出ている日本独特の意思決定のやり方は今も変わっていない。若い人にはわかりにくいところもあろうが、今の日本の政治、社会に通じるエッセンスとして読むといい。

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