イケメンや美女がビジネス書を席巻する日 電子書籍発で起こりうる市場変革
第三に業界再編の予兆です。
私は電子書籍を読む際に、Kobo(コボ) やKindle(キンドル)、スマホではhonto やBOOK WALKERを利用していますが、このうちhonto は大日本印刷と書店のジュンク堂、丸善、文教堂等が連携した、従来の枠組みを超えた電子書籍店であり、BOOK WALKER は出版社KADOKAWAの直営です。
私は10年前に、版元、取次、書店、印刷所という枠組みを超えた業界の垂直統合を予測したことがあります。
「他の業界の動きを考えてみると、いずれは垂直統合、つまり、出版社と取次と小売店が統合した会社ができるでしょうね。松下や東芝といった電器店は失敗しましたが、自動車メーカー各社やコンピューター会社のアップルなどは垂直統合の成功例です。出版業は他業種に比べて、製作から流通まで絡む要素が少ないので、垂直統合はやりやすいと思います。次の企画へのフィードバックもしやすくなる。たとえばAmazon などは、とりあえず取次を飛ばして、出版社と直接結びつくということは狙っているでしょうね。紀伊國屋書店と講談社の合併もないとは言えません」(「街の本屋はなぜ潰れてしまうのか?」『中央公論』2007年11月号)
この予測は、今まさに具現化されているということです。
最近も、TSUTAYAが徳間書店を傘下に収める動きがありました。徳間書店の雑誌『アニメージュ』がTSUTAYAでしか買えなくなる……という事態が今後起こらないとも限りません。
電子書籍は以上のような変革をもたらしましたが、次の10年はどうなるのか考え始めると……ビジネス書分野において電子書籍がそのまま拡大し続けるのかどうか、私は懐疑的です。それは作家側の問題になります。
ビジネス「書」作家の消滅?
最後に、そのビジネス書作家について指摘しておきます。実は、ビジネス書作家の場合、紙の本や電子書籍という形態にこだわる必要はありません。
なぜか?
ビジネス書作家は、私自身もそうですが経営者や専門職と兼業している人が多いので、生活のため、おカネのために執筆している人はほとんどいません。あくまで自分の考え方やノウハウなどを世に広めたいために書いているので、伝播力のあるメディアであれば、本という形態にこだわる必要がないのです。これは筆1本で世を渡る文芸系の作家と大きく異なる点でしょう。近年は文芸系でも専業はなかなか困難ですが。
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