ダメ新人から超一流シェフに成った男の半生

世界有数のミシュラン星付き店で輝く日本人

――「行動のみが現状を変える」。

米澤氏:実のところ、そこから貯金もはじめてはいたのですが、なかなかお金が溜まらず苦労しました。出発直前、ようやくかき集めても、たったの40万円。結局決めたのは飛行機のフライトだけで、あとはそのまま働く場所も、住む場所も決めずに渡米しました。この先どうなるとか「常識」で考えてたら、とてもじゃないですけど行けなかったと思います。

今、「どうしたら海外に行けますか」とアドバイスを求められることがあります。そんな時は決まって「とにかく“行く”と決めたら、それに必要なことから逆算して動いたほうがいい」と伝えています。今でも、「行動のみが現状を変える」と信じています。そして結果的にはこの選択が、今に繋がる料理人としての私の生き方を形作ることになったんです。21歳の時でした。

「鳥さばき」「アスパラ剥き」で掴んだ“最高峰の現場”

――アテなし、コネなし、お金なしのニューヨーク生活が始まります。

米澤氏:ニューヨークに着いてからの予定を何も決めずにいたので、とりあえず、本格的に英語を学ぼうとまずは語学学校に通ってみました。ところが、わずか2回目の授業で、自分には難しすぎて、学校で学ぶには限界があり、体当たりで覚えていく方が早いことに気づかされました。とはいえ、とりあえず仕事をするにしても、日本で独学した最低限の英語しか話せないし、どうしたものかと困っていましたが、たまたま居候していた先の知り合いが、現地の人気日本料理店に求人があることを教えてくれ、「これはチャンスだ」とすぐ会いに行きました。

今でも覚えていますが、お店に着くなり「これ、さばいてみて」と、鳥を一匹ぽんと目の前に差し出されました。面接から始まるとばかり思っていたので、少々驚きつつも、恵比寿時代に教えられた通りにさばいてみたら、それを見て「よし」とひと言。その日から働かせてもらえるようになりました。

――恵比寿の頃に学んだ「基本」が、身を助けました。

米澤氏:「なんだ40万円もいらなかったな」と、軽口を叩いていましたが、すぐに目が回るほどの忙しい日々が始まりました。ニューヨークタイムスで三ツ星評価を受けたレストランで働いた唯一の日本人が経営する、現地で人気の日本料理店。恵比寿時代は勉強に一所懸命でしたが、圧倒的に働いたと思えるのはこの時期でしたね。週6日働かせてもらって、残り1日の休みの日にも、直接見たり、評判を聞いたりして知ったお店に電話をかけては、「そちらでインターン(研修生)として働かせてください!」と、つたない英語でお願いしていました。

最初は、電話をかけるのにも勇気がいりましたが、だんだんそんなことも慣れてきて。そんなことよりも、現地の高級レストラン・有名レストランでの現場経験が積めることの方が、遥かに刺激的だったんです。お金も無かったですし、体力的にもハードでしたが、一流のシェフの仕事を目の当たりにでき、一日の仕事の終わりには「なにか好きなものを食べろ」と、一流シェフの料理を食べさせてもらえる(厨房に立ちながらですが)……。お金では買えないものをたくさん吸収させてもらいました。

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