ダメ新人から超一流シェフに成った男の半生 世界有数のミシュラン星付き店で輝く日本人
「Jean-Georges」に出会ったのも、この週1の見習い活動がきっかけでした。ニューヨークで三ツ星を獲り続け地元有力紙からも絶賛のコメントが寄せられていた、最高級フレンチレストランは外から眺めてもかっこよく、使われている機材や鍋ひとつとっても格好よかったのを覚えています。私はすぐに電話をかけ、インターンで働かせてもらえるようお願いしたのですが、ここでもまた恵比寿で学んだ基本が活きたんです。
インターンとしてお店に入った初日、アスパラを2ケース、またぽんと目の前に出されて「全部剥いて、切ってくれ」と言われたんです。アスパラを剥くのは、恵比寿の頃からずっとやっていて、誰よりも早く美しく下ごしらえすることには自信がありました。すぐに下ごしらえしたアスパラガスを見てもらうと、周りから「あり得ない」「早いのに綺麗だ」と、皆一様に驚いてくれました。そうやって、成果を見てもらって、また翌週もとお願いしていくうちに、少しずつ次の仕事を掴んでいきました。その後、「Jean-Georges」ブランドであるニューヨークのカジュアルラインのダイニングに雇ってもらえることになったのも、こうした基本があったからだと思います。そうやって、順調に経験を積んでいくかに見えた数年後、私は今まで味わったことの無いピンチに見舞われたのです。
ポジティブ思考で乗り切った最大のピンチ
米澤氏:Jean-Georgesでの仕事が板につくようになって、私はさらに新しい目標を掲げるようになりました。
それは「日本人でのスーシェフ(副料理長)になった人物はいない」という事実を耳にし、「それならばいっそ、この1年でスー・シェフを目指して全力で頑張ってみよう」と思ったんです。自分にとっては高い目標でしたが、成し遂げるためにはどうすればいいかをひたすらに考えがむしゃらになって仕事をしていました。そうして、「作業」にならないよう、再び自分の中でエンジンをかけて取り組むこと1年後、入店から数えて3年、ようやく納得のいく目標を達成することができました。