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〈秘話〉ロサンゼルスで創業者を自ら説得・・・東宝の松岡社長が告白「GKIDS192億円買収」の舞台裏 「いろんなことが運と縁でつながった」

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かねて自前主義で知られてきた東宝だが、ここ数年、積極的なM&Aを仕掛けている(撮影:今井康一)

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昨年10月、とあるM&Aのニュースがエンタメ業界をざわつかせた。映画大手・東宝による、アメリカのアニメ映画配給会社・GKIDSの買収だ。取得価額は192億円に上る。
GKIDSは、数多くの配給作品がアカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされた実績を持つ、業界では名の通った企業だ。2024年には、GKIDSが北米に配給したスタジオジブリの『君たちはどう生きるか』で同賞の初受賞を果たしている。
東宝・松岡宏泰社長のインタビュー後編となる本記事(前編はこちら)では、このディールが実現するまでの一部始終を打ち明けた。海外配給におけるソニーグループとの競争や、動画配信事業のM&A(合併・買収)に対するスタンスも問うた。

「東宝にやる気があるのか」

――アメリカのアニメ映画配給会社、GKIDSの買収は業界で注目を集めました。2032年に海外売上比率30%(現状は10%程度)という目標達成に向けて、カギとなるのでしょうか。

GKIDSのファウンダーが、自分やGKIDSの将来を考え、誰かに事業を売却したいという思いを抱き始めたのだろう。たまたまそのタイミングで、グループ会社のTOHOグローバルの植田浩史社長が、GKIDSに非常に近い方から「(創業者の)エリック(・ベックマン)がそんなことを考えているらしいよ」と聞きつけた。

実は最初に植田さんから相談を受けたとき、(アメリカの映画・テレビスタジオであるCJ ENM)FIFTH SEASONへの一部出資に向けた交渉期間でもあった。こちらでも大きな金額が動くし、2つを同時にできるかと考えたが、こんなチャンスはないだろうなと感覚的に思っていた。

ただ、当時はほとんどM&Aをしたことがなかったし、海外ではやったこともなかった。GKIDSのメンバーと話していた植田さんは、「本当に東宝が(M&Aを)やる気があるとは思えないね」といったことも言われた。

――向こうは東宝の本気度を疑っていた。

それは言うと思うんですよ。東宝はすごくコンサバで、海外の会社を買うとも思えない。それで植田さんが、ちょうどロサンゼルスにいたエリックとGKIDSの社長に、「今、うちの社長の松岡もロサンゼルスにいるから、飛行機に乗る前に来てもらえばいいじゃないか」と。

僕は「ちゃんと中計でM&Aを行う方針を掲げていて、海外とアニメにも注力していく。成長するために頑張るから」と言いに行った。すると、「そうか。嘘つくなよ」と。そして、FIFTH SEASONへの投資を発表し、われわれの『ゴジラ-1.0』と彼らの『君たちはどう生きるか』が候補に入ったアカデミー賞も終えてから本格交渉に入り、合意する条件に至った。

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