〈7年ぶり新ブランド〉“スーパードライ依存”から脱せるか。アサヒビールの新商品「ビタリスト」に透ける思惑 キリンの猛追をかわせるか?

黒いラベルが印象的な新ビールは市場回復への一手となるか――。
4月15日、アサヒビールは新しいスタンダード(標準的な価格帯の)ビール「アサヒ ザ・ビタリスト」(以下、ビタリスト)を発売した。その名の通り、爽快な苦みを特長とした商品で、スタンダードビールの新ブランドとしては「アサヒ グランマイルド」以来、7年ぶりとなる。
ターゲットにするのは、350ミリリットルの缶ビールを週に6本以上飲むビール愛好家。アサヒによれば、この層はビール全体の約7割を消費する巨大な層で、そのうち6割がビールに苦みを求めているという。市場にはこのニーズを満たすスタンダードビールがなく、アサヒはここに新しい市場開拓の余地があると考えた。
2025年12月までの販売目標は200万ケースに設定。2020年から2026年まで3段階にわたって実施されているビール減税も追い風に、新商品でシェアの拡大を狙う。
あえてトレンドに逆らう
今回のビタリストで特筆すべきは、最近のトレンドとは正反対のビールであることだ。
近年、若年層をターゲットの中心に据えた飲みやすいビールが増えている。代表的なのはサントリーが2023年4月に発売した「サントリー生ビール」や、キリンビールが2024年4月に発売した「晴れ風」。いずれもビール特有の苦味を抑え、若者の支持を集めたことがヒットにつながった。
現在、ビールを消費している中心は40〜60代。高齢化や人口減少を踏まえると、若年層の顧客を獲得しなければ、市場の縮小に歯止めが利かなくなる。そうした危機感から、各社が若者を意識した商品開発に力を入れているというわけだ。
そんな中、アサヒは今回、近年の流行からはまったく外れたビールを発売する。背景には、看板商品「スーパードライ」への依存体質から脱却する狙いがある。
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