市場期待の「WASHハウス」、出店攻勢に異変? コインランドリー専業、減益決算で株価急落

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FCオーナーとすれば、初期費用と月額の管理手数料や諸経費を払うだけで、収益を得られるというメリットがある。初期費用は規模や立地によって異なるものの、平均的なモデルではFCシステム一式に建物の建設費用なども含めて3000万~4000万円程度という。

2001年にWASHハウスを創業した児玉社長は、「セブン-イレブン・ジャパンとは扱う商材が違うだけで、FC運営でビジネスを広げるという点で似た業態だと考えている」と説明。

本部が管理運営を行い、店舗はセルフサービスの無人店舗となっていることで、一般的なFCに起こりがちな本部と加盟店の対立を防げるほか、FCオーナーにとっても手間がかからず、メリットが大きいことを強調する。

信頼は取り戻せるか?

今年6月の会社四季報オンラインのインタビューで児玉康孝社長は国内の出店余地として2万~2.5万店はあると語っていた(撮影:今井康一)

こうしたユニークなビジネスモデルが注目され、WASHハウスの株価は、上場した2016年11月の初値1970円(株式分割調整後)から今年3月末には一時3倍超の6200円まで上昇した。

中小型株ファンドとして個人投資家に人気があるひふみ投信を運営するレオス・キャピタルワークスが、上場直後からWASHハウス株を8%以上保有していることも、個人投資家から期待を集めていた理由だった。

こうした局面での業績未達は、市場の落胆を招いた。下方修正の理由を説明したプレスリリースによると、同社の業績予想は営業担当社員のFC契約ノルマを社歴(1年未満は1件、1年以上は2件、支店長は6件など)によって決め、人員計画と平均受注単価を掛け合わせて、算出していたという。

新規FCへのシステム販売が収益柱となっているため、FCの増加ペースの鈍化は業績悪化に直結する。高い成長を掲げる一方で、それを支える優秀な人材の確保に苦戦している様子がうかがえる。

とはいえ、WASHハウスの出店地域は本社のある宮崎、福岡など九州地域がほとんど。今期からは岡山県や愛媛県、香川県などにも出店地域を拡大している。

土地勘のない地域では出店に適した候補地を探す難しさはあるとはいえ、営業人材の確保が進めば出店の余地はまだあると言えるだろう。

WASHハウスは今回の業績下方修正を受け、採用担当の増員をしており、管理職クラスの人材の積極的な採用も行っているという。児玉社長も、「将来的には全国で2万店以上の出店は可能」と意気軒高だ。

都心部などではコインランドリーの数が増えたことで競争が厳しくなっている面もある中、再び投資家の信頼を取り戻すことはできるのか。着実に新規FC獲得の実績を積み上げていくことが、WASHハウスの成長継続の条件となる。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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