大企業ものめり込む「ベンチャー投資」の熱狂 三越伊勢丹、ニコン、ヤマハなどが参戦
「とにかく足元のパフォーマンスは絶好調」。ベンチャー企業への投資を手掛けるグロービス・キャピタル・パートナーズの今野穣COOは言う。「昨年組成した5号ファンドでは、総額160億円の枠にほとんど営業をせずに数カ月で200億円を超える申し入れがあった」(今野COO)。
ベンチャーへの投資が活況を呈している。日銀の金融緩和によって多額のマネーがベンチャー投資にも流入。政府も「日本再興戦略」の中で、ベンチャー支援策を次々に打ち出し後押ししてきた。
ジャパンベンチャーリサーチの北村彰相談役は、「2016年のベンチャーの資金調達額は1800億円超と、2015年の1685億円からさらに増える見通し」と話す。これは、直近の底だった2012年の3倍近い水準で、リーマンショック前の2006年を上回る。日本では1970年代から約10年周期でベンチャーブームが巻き起こってきたが、今は「第4次ベンチャーブーム」が起きている。
VRやAIなどに立脚したベンチャーが登場
出資を募る側のベンチャー企業の質と資金調達ニーズも変わってきている。「数年前まではスマホのプラットフォーム化に対応したベンチャーが多く資金用途も広告費などが中心だったが、昨年あたりからVR(仮想現実)、AI(人工知能)などの技術に立脚した面白い投資先が徐々に現れてきた」(ジャフコの藤井淳史投資一グループリーダー)。
こうした傾向は、起業家の個性の変化にも由来する。ガンホー・オンライン・エンターテイメントなどの創業者で「連続起業家」の孫泰蔵氏は、「(1990年代のネットバブル時に起業をした)僕たちの世代はギラギラの肉食系。でも、今の起業家たちは純粋に社会を良くしたいという思いが強い。昔だったら大企業にいたような人材が次々に起業している」と話す。
たとえば、工場直販の衣料を販売するライフスタイルアクセントの山田俊夫CEO(34)は毎年100の縫製工場などを訪問。「日本の繊維産業を再興したい」とメイド・イン・ジャパン衣料を世界へ向け展開しようとしている。Cerevo創業者の岩佐琢磨社長(38)は、元パナソニックの家電エンジニア。「ニッチ家電で世界に挑む」と次々に大手が作らないユニークな家電を生み出す。ほかにも医療や農業など、既存事業者の力がむしろ強い領域で、革新的な事業に挑戦する起業家が多いのも特徴だろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら