大企業ものめり込む「ベンチャー投資」の熱狂 三越伊勢丹、ニコン、ヤマハなどが参戦

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『週刊東洋経済』は2月13日発売号(2月18日号)で『ベンチャー沸騰!』を特集。ベンチャー投資の最前線を追っている。ベンチャーに熱視線を送るのは、専業のベンチャーキャピタル(VC)や政府資金を元手に1000億円規模の予算を持つ国立大学発VCだけではない。いま急速に台頭しているのが、大企業がベンチャー投資を行う「コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」だ。

ベンチャーへの期待が高まる一方、ブームはやや過熱気味だ(写真:xiangtao / PIXTA)

CVCはこれまで、ベンチャーとの事業的な親和性が高いITや通信会社が担い手の中心だったが、近年その様相が大きく変わってきている。2016年には三越伊勢丹ホールディングス、コカ・コーラウエスト、ニコン、アシックス、資生堂、西日本旅客鉄道(JR西日本)などが相次いで、CVC事業会社やファンドの設立を発表した。有名なピッチイベント(ベンチャーが短時間で投資家に自社を売り込む大会)には、大企業の経営企画関係者がずらりという光景も珍しくない。

既存事業の将来性に対する不安、危機感

「百貨店の事業推進エンジンとしたい」(三越伊勢丹イノベーションズの白井俊徳社長)、「東京五輪以降の事業柱を生み出したい」(アシックス・ベンチャーズの蔭山広明社長)と理由はさまざまだが、共通するのは既存事業の将来性に対する不安、危機感だ。外部からのアイデアや技術を取り入れるオープンイノベーションの一環ともいえる。

ベンチャーへ投資する大企業を支援する動きもある。たとえば、トーマツベンチャーサポートが行う「出張モーニングピッチ」というサービスでは、企業の役員会などにベンチャー5社を連れて行き、その経営陣の前でプレゼンテーションをしてもらう。「企業の経営層や冷めた目で見ている社内の重要人物をいかに巻き込めるかが、CVCが継続的にうまくいくポイント」(トーマツベンチャーサポート事業統括本部長の斎藤祐馬氏)。

ただ、専業のVCと比べ、大企業のCVCは情報網や人員数、目利きに劣るケースが多く、すでに事業モデルを確立しているミドル、レイター期への投資が多くなりがちだ。また、多くがキャピタルゲイン狙いではなく、事業シナジーの追求が目的のため、割高な投資も受け入れやすい。ベンチャー企業の1社あたりの調達額(中央値)は2015年に1億円を突破(ジャパンベンチャーリサーチ)するなど、バリュエーションが高まる一因ともなっている。

起業するベンチャーにとっては絶好の資金調達環境だが、カネ余りにより、投資する側の人材が不足してきているという指摘もある。日本アジア投資の志村誠一郎取締役は、「ベンチャー経営者ときちんと対話をせずに資金だけを出す風潮になれば、ブームはバブルの一歩手前になりかねない」と警鐘を鳴らす。継続的にベンチャーを生み出す土壌を作れなければ、一過性のブームで終わってしまう。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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