日本人女性に足りないのは「自己肯定感」だ なぜ女性の管理職が少ないのか

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一方で、日本企業の幹部の間から聞かれるのが、「手を挙げる女性が少ない」という声だ。では、はたして女性側の「意欲」の問題なのだろうか。もちろん、日本のような長時間労働体制の下で育児や介護などの負担を負わされることの多い女性が、責務の重い管理職に就くことにためらいを感じる人がいるのは事実だろう。一方で、十分に能力はあるのに、それを躊躇させる何かがある。それはやりたい、やりたくない、といった単なる「意欲」ではなく、もっと根源的な「コンフィデンス」(自信、自己肯定感)だ。

リーダーシップにはコンピテンス(能力)とコンフィデンスが必要だが、女性にはこの自己肯定感が圧倒的に欠けている。2011年のイギリスの管理職に対する調査では、「自信がない」と答えたのは、男性が3分の1以下だったのに対し、女性は半数に上った。8年にわたる48カ国、約98万5000人に対する国際調査で、「自分に自信(自尊心)がある」と答えた人の割合はすべての国で、男性が女性より高かった。

つまり、男性は自分のパフォーマンスを過大評価する傾向があり、女性は過小評価しやすいということだ。こうした気質は子どもの頃から顕著に現れる。男子は、無邪気に自慢したり、カラ威張りし、「できないこと」も「できる」と言ったりする傾向が強いが、女子は一般的に「できること」も「できない」と謙虚に言うなど、空気を読み、自慢ととられないように気を使うところがある。

男の子は「バカだ」「アホだ」と、お互いを悪気なくお互いをディスり合いながら、荒っぽい、汚い言葉にも耐性をつけていくが、女子にそうしたノリはあまりない。さらに、男の子は怒られ、罰を受けることにも慣れ、失敗を受け入れやすいタイプが多いが、優等生タイプの女子はなかなか、そうはいかない。

リスクや間違いを恐れる傾向

そもそも、女性は男性に比べてリスクや間違いを恐れる傾向があるといわれている。女性ホルモンのエストロゲンは結び付きを促し、衝突やリスクを回避させる。結果として、過剰なまでに慎重になりやすい。また、女性のほうがネガティブな出来事の記憶を形成しやすく、過去の失敗にとらわれやすいのだという。一方、男性ホルモン、テストステロンが高い人はリスクを取りやすい。それが大胆な決断を可能にするなど、自信に結び付くというわけだ。

このように、生物学的な性差や育てられ方など複数の要因が女性の「自信や自己肯定感の形成」に影響してくる。こうした性差をアメリカでは「コンフィデンスギャップ」と呼び、女性が活躍していくうえで最も根源的な支障になっていると考えられている。「コンフィデンスギャップ」はコミュニケーションの側面でも大きなハンデとなっている。

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