規模の小さい助産院や診療所で出産する場合、直接支払制度は利用できない場合がありますが、その代わり、類似の仕組みとして「受取代理制度」を利用できることがあります。申請自体は本人が行うものの、出産育児一時金は助産院等へ支払われるため、42万円までは出産費用を支払う必要がありません。
そして、いったん医療機関等に出産費用を全額支払い、後で健康保険組合へ申請する方法もあります。医療機関等によって、利用できる制度が異なるので、事前に確認しておくとよいでしょう。なお、自営業やフリーランスの方が加入される国民健康保険においても、出産育児一時金の申請が可能です。
次に、産休中について見ていきましょう。女性は、出産に際して産前産後休業を取ります。産前は、本人の希望次第でギリギリまで働くことが可能ですが、産後8週間は法律で会社が休みを与えることになっています(ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が就業しても支障がないと判断すれば就労可能です)。産休中は、会社の規定で「無給」となる場合が多いのですが、その間の生活保障として、健康保険制度から「出産手当金」がもらえます。
手当金支給の対象となるのは、出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み、原則として給与の支払いがなかった期間です。
1日あたりもらえる金額は次のように算出されます。
【支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)
(注)12カ月未満のときは別途所定の方法による
標準報酬月額が過去1年30万円だった場合、1日当たりもらえる額は6667円。産休期間を法定どおり取った場合は98日間となるので、もらえる額は総額65万3366円となります(出産手当金の額より少ない給与が支払われている場合は、差額が支払われます)。
育休中にもらえる給付金はどれくらい?
さらに、育児休業を取る社員には、雇用保険制度から「育児休業給付金」を申請することができます。こちらは雇用保険に入っていることが前提となりますが、出産育児一時金や出産手当金と違って、被保険者であるだけでは対象とならず、後述する一定要件に該当している必要があります。
では、もらえる金額はどれくらいなのでしょうか。女性の場合は、子どもが1歳になるまで育休を取ることは珍しくなく、期間が長いだけあってもらえる金額も大きくなります。育休開始後180日目までは休業開始時賃金(休業前6カ月の平均給与)の67%、それ以降は50%が支給されます(上限あり)。
たとえば、平均給与が30万円だった人が、子どもが1歳になるまで育休を取った場合、もらえる金額は約182万1000円。保育所等に入れず、育児休業期間を1歳6カ月に達するまで延長した場合は、加えて90万円がもらえます。なお、2017年10月1日からスタートする改正育児・介護休業法によって、子どもが1歳6カ月に達しても保育所等に入れない場合などは、さらに2歳に達するまで育休を再延長できるようになります。これを利用した場合は、さらに90万円がもらえることになります。
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