freeeがマネーフォワードに敗れた根本原因

「自動仕訳機能」を巡る特許裁判の教訓とは?

だが、その一方で高橋弁護士は「インカメラ手続きがとられたことは、ある意味画期的」と評価する。

ソフトウエア特許の侵害を立証するのに必要な情報を合法的に入手するための強力な手段として、裁判所から被告に対しなされる、文書提出命令という手続きが存在する。原告が文書提出命令を出すよう裁判所に求めれば、普通被告は提出を拒否する。被告に証拠の提出を拒否するだけの正当な理由があるかどうかを判断するため、裁判官等が文書を確認する手続きをインカメラ手続きという。

インカメラ手続きにおいては、文書を確認するのが裁判官のみの場合だけでなく、相手方の当事者、従業者、又は訴訟代理人が文書を確認する場合もあるが、被告側の営業機密にかかわるだけに、インカメラ手続きすら実施されることがないまま、文書提出命令の手続きが用いられないケースが大半だった。

しかし、内閣の知的財産戦略本部が2016年5月に策定した「知的財産推進計画2016」に、知財訴訟の運用ルールを緩和する方向性が示されたことをきっかけに、風向きが変わり、紛争処理に関する規定を定めている特許法105条が改正される可能性が出てきた。

今回はインカメラ手続きを経て、文書提出命令は却下されたが、「ソフトウエア関連発明では、訴訟の重要な証拠が相手方に偏在していることが多いので、本件は、文書提出命令は却下されたものの、インカメラ手続き自体が活用された点に意義がある。ソフトウエア関連発明における権利行使性のあり方を考え直す契機となればよい」(高橋弁護士)。

今回の裁判の意義は小さくない

民間企業でソフトウエア・ウェブサービス開発に従事した経験を持つ松原正和弁護士は、「独自に開発したソフトウエア・ウェブサービスで成長を狙うベンチャーの経営者は、特許で技術を守ろうという意識に乏しい。だが、この訴訟はその意識を多少なりとも変えるかもしれない」と見る。

実際、ソフトは特許では守れないというのが常識だったためもあるのだろう。「とにかく開発で先行してシェアを確保し、顧客を囲い込むことを最優先させる経営者が多い」(松原弁護士)という。だが、後続がぴったりすぐ後ろに付けていたら、得られる先行利益は限定的なものになる。「ソフトウエア・ウェブサービスは、そのロジックまでは見られなくても画面は見られるので、マネできる」(松原弁護士)からだ。

マネーフォワードの辻庸介CEO自身も、一審勝訴を公表した7月27日の会見の席上、「今後は特許戦略をしっかり考える必要があるとあらためて実感した」と述べた。

敗訴はしたものの、freeeの提訴が業界全体を啓蒙するきっかけになったのだとしたら、意義はあったということだろう。

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